そこへ五十嵐が仲間入りし、病院にはまた新しい風が吹いた。
そして、「地域医療構想会議」には大迫教授、綾野の父、三瓶たちの病院の理事長が一堂に会する。
10巻のあらすじを振り返ってみましょう。
地域医療構想会議
地域医療構想会議で春から新しく赴任してきた松木健司保健福祉局長が紹介された。
松木は超高齢化社会に備え、厚労省は全国的に病床の分類を再編する考えだと話す。
西島病院は厚労省の計画通り、回復期病床を増やすことを目指す。
綾野病院は過疎・高齢化が進む山間地域の通院困難な患者を抱えているため、巡回診療や、訪問診療を引き続き行い、80床あるうちの70床は閉鎖している。
三瓶たちの丘陵セントラル病院は救急患者の増加に伴い増床を希望するが、急性期病床を3割減、回復期病床を2倍にしたい厚労省の意向には合わず却下されてしまう。
勲先生の緊急手術
ある日、綾野病院の院長・勲先生が過疎地の往診帰りに事故を起こし、頭部に鉄柱が刺さった状態で丘陵セントラルに搬送された。
危険な状態に驚愕する三瓶たちだが、脳へのダメージを最小限に留めようと力を合わせて手術に挑む。
川内は緊迫した状況のなかでも冷静な三瓶のアシストを受け、術野が極端に狭い領域の縫合を成功させた。
綾野が病院に駆けつけたころ、ちょうど手術を終えた三瓶は勲先生の状況を説明し、後遺症として社会的行動障害が出る可能性に言及した。
綾野は父に代わって、しばらく綾野病院で診察や往診を行うことに。
勲先生の社会行動障害
病院生活での様子や、五十嵐のリハビリを観察し、三瓶はやはり社会的行動障害の症状が出ていると説明した。
周囲からはワガママな人と捉えられそうな行動が見られるが、この状態に苦しんでいるのは患者であると、周囲が理解してあげてほしいと三瓶は妻に話す。
綾野は勲先生が戻ってこられない現状を説明するため、過疎集落の自治会に参加し、そこで自治会長の里村と話すうちに、初めてその地域のことを深く知ったのだった。
リハビリを重ねて感情のコントロールを身に着ける勲先生だが、古い友人である理事長には、依然と比べて判断が遅いことと、性格が日によってバラバラであることを指摘された。
さらに課題を進めるように五十嵐に指示した三瓶は、一通りの課題を終えると、勲先生の後遺症による行動の問題点とその対処方法を説明した。
綾野と西島
西島が綾野に別れを切り出してから、ギクシャクしたままの二人。
過疎集落に往診に出かけた綾野の忘れ物に気づいた西島は、それを届けるため集落を訪ね、そこで患者に生き生きとした優しい笑顔を見せる綾野の姿に胸を打たれる。
里村家に往診に出向いた綾野と西島は、里村が認知症の父親と、寝たきりの母親の介護のため、妻子をおいて故郷に戻っていたことを知る。
さらに勲先生がかつてカテーテル手術に携わっていたこと、里村の母親は勲先生の手術後に麻痺と失語症を発症したことを聞き、大迫教授のもとへ。
そこで父親にもかつて、今の自分のように悩んでいた時期があること、そして綾野には自分と同じ苦労をさせたくないと話していたことを聞かされた。
綾野は西島に、経営者になる話を受け西島グループに入ったうえで綾野病院の過疎地医療を続けいきたいと、改めて結婚を考えてほしいと申し出た。
残酷な問いかけ
綾野の希望を叶えるため、綾野病院が過疎地医療継続について祖父の説得を試みる西島だが、祖父は西島と綾野の婚約を解消し、綾野病院は買収すると言い出す。
西島はその結婚に同意する代わりに、綾野病院の負債を償却したうえで、新たな病院を建てられるだけの額で買収するよう祖父に要求する。
一方、勲先生は新たに過道徳症候群という壁にぶつかっていた。
前頭前野損傷患者と健常者にはしばしば違いがでる、「トロッコ課題」。
大勢を助けるため一人の犠牲者を出すのか、一人を助けるため大勢の犠牲者を出すのか。
三瓶の問いかけに、丘陵セントラルの脳外科チームは皆、答えを出せない。
綾野のジレンマ
綾野病院を売り負債を返済した後、過疎地に新クリニックを建設をすることを綾野に提案する西島。
綾野に自由を与える代わりに、別の相手と結婚することになった西島の「今までありがとう」という言葉に綾野は胸が詰まる。
綾野はまさに、多くの人を助けるため一人の犠牲者を出すこと、その選択の前に立たされたのだった。
そして、西島の必死の交渉は無下にされ、約束した条件とは違う条件で買収の話が進んでいることを知った綾野は、お見合いを止めようと西島のもとへ急ぐが、まともに話すらさせてもらえず引き離されてしまう。
綾野はこのまま綾野病院と西島の両方を失ってしまうのか。
生きるべきか、死ぬべきか
綾野の報告を受け、勲先生は病院は売らずに最期まで自分の信念を貫くと宣言するが、話の途中で麻痺と脳ヘルニアのサインが現れた。
同時に過疎集落の里村が急性硬膜下血腫で運び込まれ、こちらも脳ヘルニアのサインが出ていて緊急を要する。
どちらかしか助けられないのか?三瓶もまた選択の前に立たされた。
同時手術でどちらも助けると決断した三瓶は、勲先生の手術に川内を向かわせ、自分は里村の手術に向かう。
あっという間の速さで里村の手術を終わらせると、勲先生の手術に合流する三瓶。
5分の猶予しかない吻合に挑む三瓶と川内の様子を見守る面々は、川内のすさまじい集中力と速さに驚かされた。
勲先生は無事に目を覚まし、それを見届けた綾野は再び西島のもとへと急いだ。
全部あきらめない
綾野病院もカテーテルも西島も諦めない。
ようやく答えをみつけた綾野は、西島を新婚約者から奪い連れ去る。
勲先生の退院の日、西島と入籍したことを報告にやってきた綾野。
理事長はもう一つめでたい話があると丘陵セントラルと綾野病院の合併を発表した。
経営不振のため封鎖していた綾野病院の病床70床が丘陵セントラルに移されることとなり、綾野病院には今まで通りの過疎地医療を、綾野には医師としてカテーテルを続けてほしいと話す院長。
丘陵セントラルが差し伸べた手に、綾野は涙が止まらなかった。
【10巻のまとめ】
父の入院をきっかけに過疎地医療の重要性を身に染みて感じた綾野は、ますます自分の将来の選択にジレンマを感じる。
三瓶たちの、どちらも諦めないという姿勢を目の当たりにした綾野はついに心を決める。
丘陵セントラルは綾野病院との合併を発表し、両病院は手を取り合い互いの希望を叶えたのだった。
【10巻の見どころ】
この巻の見どころは、地域医療の未来を巡る激動の展開と、命を懸けた壮絶な手術シーンです。
地域医療構想会議では、それぞれの病院が異なる立場で改革に向き合う姿が描かれます。
特に、急性期病床削減に対する三瓶たちの葛藤は見逃せません。
さらに、勲先生の事故と緊急手術は、まさに手に汗握る場面。極限状態のなか、三瓶と川内が繰り広げる精密な縫合のシーンは圧巻です。
そして、綾野と西島の関係が揺れ動くなか、病院の存続と愛を天秤にかける決断が突きつけられます。

次巻へ続きます。
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