漫画家・遠野なるひこが担当に提案され、苦渋の中描いた離島の青春日常漫画「わっかもん」。
漫画家歴10年なのに鳴かず飛ばずで路線変更を強いられて書き始めた漫画だが、アシスタントのとし坊に重い腰を叩かれ、助けられながら第1巻が発売され、さらに緊急重版が決定した。
これは離島に住みながら、青春マンガを描く漫画家の日常を描いた漫画である。
ある日、漫画の登場人物にガチ恋してしまった謎の女性ファンから手紙が届くようになるが、その正体は遠野の同級生・笹山の娘のひいろだった。
そして東京でサイン会を開くこととなり、担当の林とも対面を果たしつつ、集まってくれた大勢のファンに対して感動と緊張のサイン会が始まる。
遠野は沢山の人に必要とされているとサイン会を通じて感じ、島に帰ってから決意を新たに漫画を描く決意を固めた。
早速、大豊作で処理に困ったさつまいもをかんころもちにして、とし坊やひいろたちにも手伝ってもらいながら漫画のネームに活かす遠野。
もう遠野は1人ではないのであった。
最終巻のあらすじを振り返ってみましょう。
ちっちゃい不良をモデルにする
「わっかもん」で不良キャラを描こうとする遠野だが、実際に不良を見たことはなく、リアリティがないネームになってしまう。
そこへ妹親子が遠野の元へと訪れ、遠野は甥っ子・蓮を預かることに。
蓮はちょっと扱いにくい子どもであり、せっかくテレビゲームに興味を示したものの、とし坊が大人げなく一人勝ちしてやる気をなくしてしまった。
そしてアイスが食べたいなどと大声で駄々をこねだし、暴れる蓮。
遠野は田舎の遊びを提案するも、遠野を平手打ちするなど暴力に訴え、遠野はその理不尽な暴力こそ求めていた不良だと気づかされる。
そこへひいろが現れ、テレビゲームを返しにもらいに来た。
遠野を殴ろうとする蓮に対し、ひいろは「弱いものいじめするな、甘えた拳は便所に捨てろ!」と怒る。
ビビった蓮は、すっかり大人しくなり、ひいろの舎弟に。
そしてひいろの放った言葉も、不良キャラのキメ台詞としてネームに採用されるのだった。
もなかちゃんとの運命の出会い
実家からの帰り道、弱った子ネコと出会った遠野。
子ネコを狙っているカラスの鳴き声と子ネコの鳴き声が聞こえ、居ても立っても居られなくなった遠野はその子ネコを助けた。
動物病院に連れて行き、そのまま家に引き取って、「もなか」と名付けた。
初めは飼うつもりはなかったが、面倒を見ているうちにすっかり溺愛。
このまま仕事が手に付かなくなる可能性もあるが、「ネコ飼ってるマンガ家さん沢山いるし、いけるよね」と自分を納得させるのだった。
ネコの先輩、ひいろ
いつものように遠野の家へと遊びに来たひいろも、すっかりもなかの虜になった。
もなかはすっかり元気になって、動き回っている。
とし坊がケージを作ってくれ、遠野はPCの周辺はフェンスで囲ってガードしようとするが、フェンスが足りない。
もなかは軽々とプリンターなどの上に登ってしまい、しばらく電源はいれないでおこう…と思う遠野。
ネコグッズも大量に買い込み、ネコが登場するマンガを1人読んで涙を流すなど、もなかが生活の中心となるのであった。
落としちゃいけないものを落とす!?
ネタの取材のため磯に来た遠野ととし坊。
アラカブ釣りを体験しつつ、どうネタにしていいか悩むが、車に乗って帰ろうとした際にアクシデントが。
家の鍵が見つからないのである。
磯に落としたであろう家の鍵を探すことになり、村人の協力のもと、釣り仲間たちがみんなで遠野の家の鍵を探し始めてくれた。
それでもなかなか鍵は見つからない。
そして、飲み物を軽トラの荷台に置いた瞬間、遠野は思い出した!
事前に海で失くすのが怖かったため、軽トラの荷台のゴムシートの下に隠しておいたのだ。
とし坊にはさすがに怒られ、手伝ってくれた村人たちにも言えないが、遠野は今回の件をそのままネタにすることを思いつくのであった。
台風と戦うなるひこ
マンガは売れなくても、〆切だけは守って来た男・遠野。
しかし今回は〆切がギリギリになってしまった。
いつものペースでやれば終わると考えていたが、台風で停電になってしまい、コンピュータが使えなくなってしまったのだ。
作業しなければならないのは30ページ分、予定では、今晩中にトーン貼りを終わらせて明日データを送る予定だった。
遠野は明日の朝には停電は直るだろうと、寝ることにしたものの、翌日になっても電気は復旧していない。
様子を見にきたとし坊はすぐにでも原稿を書くことを促し、遠野は悩んだ挙句、アナログでトーン貼りをすることに決めた。
林に電話をして、事情を話すと〆切はギリギリまでずらせるが、もし間に合わなかったら代理で別の作家の漫画を掲載するとのこと。
せっかくの自分の枠を他人に渡したくない遠野は、もなかの世話にかまけていたことを反省しつつ、死んでも〆切に間に合わせるべく必死に作業。
どうにか間に合い、無事に原稿を発送できた。
安心してようやく何か食べようと思い、冷凍食品を温めて食べようとするが、まだレンジはつかない。
とし坊に促されてブレーカーを確認すると、ブレーカーは落ちたままであり、元に戻すと普通に電気がついた。。
ブレーカーにさえ気づいていれば、アナログなやり方で必死にならずとも従来のデジタル方式で効率的に作業はできていたのであった。
初めてのインタビュー
遠野は書面インタビューを受けることになり、とし坊とひいろもいるなかで質問への回答を考えていた。
漫画家を目指すきっかけや、デビュー当時の苦労話についての質問に対しては、初めて担当についてくれた森という担当者のことを思いかえす。
当時20歳で担当がついた遠野だが、ネームが複雑すぎて分かりづらいとダメ出しされ、一本の漫画を描くのに何度も直させられた。
やっとできた漫画も、奨励賞止まりで、本誌掲載条件である佳作には至らない状況が続く。
これは担当を変えてもらうしかないのではと思い悩むも、自分からそんなこと言える立場じゃないと葛藤を抱えていた。
だが森は遠野の才能を粘り強く信じ、次第に遠野も「意地でも本誌掲載メンバーに加わりたい」と思うように。
そしてついに、他の先生の体調不良時に用意していた遠野の原稿が、手直しを加えて増刊号に載せることとなり、念願のデビューを果たした。
「一からマンガの組み立て方を知らない自分に教えてくれたのは、森さんだった…」と考えながらも、質問の答えに書いたのは、「大変なことなどありませんでした」と回答する遠野。
最後に「生活環境が物語にリンクするように、常に心穏やかに焦らず慌てない生き方を心がけていきたいと思っております」と結び、初のインタビューは無事に林の元へ送られるのだった。
【3巻(完)のまとめ】
不良キャラの描き方に悩む遠野だが、生意気な甥っ子の理不尽な暴力と、それを諫めて舎弟にするひいろを見て、求めていたヒントを得る。
それから子ネコを拾って面倒を見るうちに溺愛するようになり、生活の中心がネコをかわいがることになって仕事が手に付かない時間が増えていった。
だが〆切が迫るなか台風で停電という大ピンチを迎えると、漫画家としての意地を見せて死ぬ気で作業し、〆切は守って見せた。
その後、書面インタビューを受けることになると、自分が漫画家になるにあたって初めてついてくれた担当者への感謝や、中々デビューできなかった歯痒さなどを思い出す遠野。
しかし、自分の好感度を上げるため「苦労は特になかった」と回答し、最後に「生活環境とマンガの世界がリンクするよう心穏やかでいられるようにいたい」と結んだのだった。
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