漫画家・遠野なるひこが担当に提案され、苦渋の中描いた離島の青春日常漫画「わっかもん」。
漫画家歴10年なのに鳴かず飛ばずで路線変更を強いられて書き始めた漫画だが、アシスタントのとし坊に重い腰を叩かれ、助けられながら第1巻が発売され、さらに緊急重版が決定した。
これは離島に住みながら、青春マンガを描く漫画家の日常を描いた漫画である。
2巻のあらすじを振り返ってみましょう。
頼もしいひー兄ちゃん
「わっかもん」の中では主人公たち4人よりも年上で頼りがいのあるひー兄ちゃんというキャラクターが登場する。
そんなひー兄ちゃんを描いている遠野だが、最近彼を描くことで悩まされていることが…。
「Hの女」というハンドルネームのファンから「ひー兄ちゃんを主人公にしてほしい、もっとひー兄ちゃんを出して下さい」という手紙が届くようになったのだ。
消印もないため、島の中から送られてくる手紙のようだ。
とし坊が調査すると、その正体は隣村の遠野の同級生、笹山の娘のひいろだった。
酷い反抗的な態度で、遠野に突っかかってくるひいろ。
作者である遠野ではなく、どうやらひー兄ちゃんに恋煩いしているようだ。
色紙にひー兄ちゃんのイラストを描いてあげるとひいろの顔は赤くなり、ときめいていく。
だが遠野が直筆のサインを添えると、「ゴミみたいなもん書いてんじゃねぇよ」と吐き捨てられてしまう。
自分のサインをゴミ扱いされ、遠野はショックを受けるのであった。
念願のサイン会までの道のり
ゴミと言われたサインをちょうど改良していた遠野のもとへ、林から11月に東京でサイン会を開いて100人応募することが決まったとの連絡が入る。
遠野は人前に出られるような服を持っていなかったため、とし坊のセレクトで服を着ることに。
そこにひいろが現れ、父・笹山がサインのお礼に、と魚を持たせてくれた。
ひいろはサイン会をやることを知っていて、すごく行きたい様子だが、東京まで行けるほどのお小遣いはない。
「サイン会で他の人にひー兄ちゃんを描いて欲しくない」と大泣きして訴えるひいろ。
だがそれは無理な話なのだった。
東京が怖い…
遠野の目下の悩みは、東京へ行くのが怖いこと。
ほとんど島外に出たことがない遠野にとっては、ハードルの高い話なのだ。
電車もない島にいて、東京の電車の乗り継ぎができるか、似たような駅名がいっぱいあって区別できるか…と悩みは尽きない。
林とも電話でしかやりとりしたことがないので、会ったことがなく、尚更不安な遠野。
とし坊が東京について来てくれればいいのでは?と思った遠野だったが、とし坊は、トマトの箱詰めのバイトがあるので行けず。
とし坊任せにしているところが多々あるが、何とか東京には行けそうだ。
いざ東京へ!
遠野は飛行機に乗り込み、東京へ向かう。
遠野はとし坊からもらった手紙を飛行機内で読んでいると、「オレは先生は本当にすごい人だと思っています」と書かれており、遠野は涙を流していた。
電車の乗り継ぎの手紙をもらったはずなのに、感動的な内容の手紙で終わってしまったので、「迷ったら電話ください、ガンバレ!」と付け足されていた。
羽田に着き、早速迷ったのでとし坊に電話をかけたが出ない…。
遠野はとりあえずICカードを買って、電車に乗った。
結果として全く違う方面の電車に乗り込んでしまうが、林と連絡を取ることができ、無事に目的地の東新宿に着くことができた。
熱いオンナ・林
出版社に着き、内線電話で林を呼び初対面すると、妹より年下とも思える若い女性が出てきて驚く遠野。
林はすぐに遠野がサインを変えたことも察知してくれた。
編集長との挨拶も済ませ、林が遠野を食事に誘う。
マンガ家と担当が一緒にご飯を食べることが本当にあるのかと驚く遠野。
一方、林は店に着くと酒を飲みながら「本当は先生はわっかもん描きたくないんじゃないですか?」と切り出してきた。
「腹を括っている」と返す遠野に対し、林は「人生を大きく左右する連載作品の方向性を他人に決められて、実はすごく嫌なんじゃないかって…」と本音をこぼした。
すると、遠野は「自信はないけど、やる気はありますので、今後ともよろしくお願いします」と深々と頭を下げた。
こうしてやり取りをしているうちに、林はとても熱くて、真面目で、一生懸命な人だとわかった。
だが林は酔っ払うと酒癖が悪いようで、遠野はビビってしまうのだった。
サイン会当日!
遠野はサイン会に遅刻できないと、朝からホテルを出た結果かなりの時間を持て余し、街中を歩いているうちに迷子になってしまう。
憧れだったオシャレな雰囲気のカフェに入り、早速ネームを書こうと思ったものの、眠くなって寝てしまいそうに。
そうこうしている間に、目の前で喧嘩をしているカップルが。
遠野は人の会話を聞かないように…と思っているのだが、嫌でも耳に入ってきて全て聞いてしまう。
結局、カップルは別れて店を出て行ってしまった。
遠野も時間になったので、店を出てサイン会を開催する書店へ。
売り場には大々的にわっかもんが棚に積まれて目立ち、サイン会場にはお花が飾ってある。
ドキドキしながら控え室で待ちつつ、サイン会場を覗いてみると、そこには沢山の遠野のマンガを持った人たちが並んで待っていてくれた。
その光景を見た遠野は、「今オレ最高に売れてる漫画家っぽい!」と涙を流す。
いざ、サイン会が始まる!
波乱のサイン会
事前シュミレーションでは何度か会話を交わし、交流しながらサインを書く…という流れでいたが、実際はそうは行かず、全く余裕がない。
ファンとの会話も思うように噛み合わないなか、先ほどカフェで喧嘩していたカップルも列に現れ、どうすればいいか焦る。
だが2人はどうやら遠野の漫画を読んでいたら喧嘩がどうでもよくなって仲直りしたらしい。
カフェで喧嘩を見ていたことには触れず、「とてもお似合いの2人だと思います。どうかずっと仲良くして下さい」と応援する遠野。
サイン会に来てくれるファンはみんないい人ばかりであり、古参のファンであるゆきこさんも来てくれた。
以前描いていたファンタジーとは毛色が違うが、すっかり「わっかもん」のファンになってくれたようだ。
「どこまででもついて行きます。わっかもんずっと描き続けてくださいね」と話すゆきこさんに、「いやいやいや、どうせオレなんて5巻くらいで打ち切られますから…」と卑屈にこぼす遠野。
その言葉にゆきこさんに戸惑い、さらに林も「私は打ち切りなんて考えてない。ここにいる誰もがそんな終わり方望んでない」と声を震わせ泣き出してしまう。
10年間のマンガ家生活で染み付いてしまった自己否定感に苛まれる遠野だが、サイン会でみんなが書いてくれた寄せ書きを見て、自分を応援してくれるたくさんの人のために今の漫画を放り出さないことを決意。
こうして、遠野と林の涙のサイン会は何とか終わったのだった…。
大豊作のサツマイモと戦う
東京から帰ってきた遠野。
サイン会でさまざまなことを学んだことで、決意を新たに漫画に取り組もうとしていたが、家の前でとし坊が育てていたサツマイモ畑が大豊作になっており、漫画どころではない状況に。
とし坊と2人でイモを食べていると、サイン会に行けなかったひいろがやって来て「大人はズルい!好きな人のために使えるお金があって…」と泣き叫ぶ。
その姿を見た遠野は、「わかる!」と同感。
「我慢してきた幼少時代を乗り越えて来たからこそ、大人になって自由になれることを知れ!」と諭す遠野。
そんなやりとりをしていると、宅急便がやってきて、サイン会でファンの人にもらったプレゼントが届いた。
手紙を読んで、改めて涙を流す遠野と、入っていたお菓子や風船を見てはしゃぐひいろ。
そしてまた、改めてとし坊とひいろに「自分たちがいる、焦らなくていい」と勇気づけられた。
結局、とし坊と大量のサツマイモの処理法を考えた結果、かんころもちにして、それを漫画のネタにすることにした。
かんころもちを作る道具は、ひいろのおばあちゃんが貸してくれることになり、ひいろにはひー兄ちゃんを描いてあげることで交渉成立。
翌日、ひいろのおばあちゃんの元へサツマイモを持って向かい、遠野ととし坊はかんころもちを作りながら写真と作り方のメモを取り、それをわっかもんの漫画のネームにも活かすことができた。
遠野はかんころもちを林の元へも送ると、林からはお礼と共に「今回のネーム、キラキラしてましたよ」と褒められた。
「何か困っていることはありませんか?」と尋ねる林。
遠野は「1人じゃないから大丈夫」と答えるのだった。
【2巻のまとめ】
漫画の登場人物にガチ恋してしまった謎の女性ファンから手紙が届くようになるが、その正体は遠野の同級生・笹山の娘のひいろだった。
そして東京でサイン会を開くこととなり、担当の林とも対面を果たしつつ、集まってくれた大勢のファンに対して感動と緊張のサイン会が始まる。
遠野は沢山の人に必要とされているとサイン会を通じて感じ、島に帰ってから決意を新たに漫画を描く決意を固めた。
早速、大豊作で処理に困ったさつまいもをかんころもちにして、とし坊やひいろたちにも手伝ってもらいながら漫画のネームに活かす遠野。
もう遠野は1人ではないのであった。
次巻へ続きます。
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