プロ野球のスパイダースに所属していた凡田夏之介は、プロ8年目で年俸1800万円の中継ぎ投手で、プロ野球選手としては決して一流とは言えない選手である。
このままでは引退後は年収100万円台の生活に陥ってしまう。
「グラウンドには銭が埋まっている」略して「グラゼニ」を胸に、同郷の先輩で引退しラジオでの解説者に転身を果たした徳永、同期で先発投手の渋谷、後輩で期待の若手野手である大野らと共にプロ野球選手としての生活に励んでいる。
プロ8年目のシーズンは中継ぎの便利屋として登板機会が増え、骨折による戦線離脱があったもののリーグ優勝に貢献。
契約更改でアピールに成功し、希望通り年俸がアップした凡田は、春のキャンプでは昨年で引退し今年から解説者になった大物捕手の北王子が視察に訪れ、凡田のことを目にかけるように。
北王子は来年の去就に注目が集まる身であり、出身のワイルドワンズのほかにスパイダースの監督に就任する可能性もあるなか、北王子は凡田の実力を高く評価し、先発への転向を勧めてきた。
9年目のシーズンが開幕すると凡田はローテーション6番手の先発として起用されまずまずの結果を残すものの、勝ち星に見放される日々が続くうちにチームに振り回されて2軍に落とされてしまう。
2軍からブレイクした捕手の丸金とは対照的にどん底を味わった凡田は、そんな最悪のタイミングで秘かに思いを寄せている行きつけの定食屋の店員・ユキと遭遇。
チームに振り回されるまま中継ぎに再転向を命じられ、心と体のバランスを崩した凡田がようやく1軍に復帰できたのは、10月のシーズン終盤だった。
CS進出がかかった激しい争いのなか、凡田は目覚ましい活躍を見せてチームをCSへ導き、さらに中継ぎ投手でありながらCSでもMVPに選出される。
凡田はユキに認識された頃にはどん底であったものの、今や時の人となるのであった。
10巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
人生初の日本シリーズの重圧
日本シリーズはシーズン3位のスパイダースとシーズン2位のサベージとの対決となるが、特にスパイダースは1位と25.5ゲーム差をつけられていたこともあり、クライマックスシリーズの是非について多くの人が批判的な見方をしていた。
クライマックスシリーズの大躍進の立役者である凡田と田辺監督や丸金らにはネット上で大バッシングが起こり、少なからずプレッシャーとして重くのしかかる。
クライマックスシリーズをストレートで勝ち上がったスパイダースに対し、サベージは僅差の試合を何度も制しての日本シリーズ出場であり、試合勘の面でも分が悪い戦いに。
高校時代の監督や西浦の励ましのおかげで少し気分が和らぐ凡田だったが、時の人としてもてはやされて迎える人生初の日本シリーズの舞台で同じピッチングができるとは到底思えないのであった。
逆シリーズ男となるも、運が味方に
日本シリーズが始まると、予想どおり凡田が打たれ、丸金がチャンスを潰して負ける展開が続き、早くもスパイダースは3連敗。
2人がチームの足を引っ張るなか、第4戦では凡田がまた打たれながらも相手の走塁ミスでピンチを切り抜け、丸金も振り逃げで決勝点を挙げる幸運が舞い込んだことで流れが変わる。
凡田と丸金は既に「やってられるか」とヤケクソになっており、悪い意味て開き直ったことにより風向きが変わっていた。
第5戦でも凡田はホームラン級の大飛球を打たれるも味方の守備に助けられ、丸金も満塁のチャンスでは相手捕手の打撃妨害でバットを振らずに決勝点を挙げる。
幸運の女神を味方につけたスパイダースは第6戦で完勝し、日本一に逆王手。
日本シリーズは最終戦にもつれこむのであった。
開き直りが奏功し日本一を呼び込む
最終戦の前夜も凡田は酒を飲み、どこかリラックスして試合に臨む。
スパイダースの先発はエースの椎名だが、初回から2失点しさらにワンナウト満塁のピンチを迎える大乱調。
ここで田辺監督は早々に椎名を下げ、自分の直感を信じて凡田をマウンドへ。
すると凡田は1球でダブルプレーに仕留め、ピンチを切り抜けた。
まさにクライマックスシリーズと同じ展開、しかし田辺監督はこの日は凡田を第2先発として引っ張ることを決意。
逆シリーズ男として叩かれ続けた結果、凡田は丸金と共に考えるのを止めて本能で野球をし、大雑把な投球がかえってサベージのバッターを打ち取っていく。
試合はそのまま凡田が8回まで1人で無失点で投げきり、2点リードされたまま9回表のスパイダースの攻撃へ。
そしてこの土壇場で丸金が価千金の逆転3ランを放った。
9回裏は小心者の凡田に代わって守護神の瀬川がキッチリ締め、スパイダースが奇跡的な日本一に輝く。
日本シリーズMVPは非常に悩ましい選考の結果、日本一を呼び込んだ丸金が受賞するのだった。
ナッツ(高校生)編⑦
凡田の悪い意味での開き直りは高校時代にもあった。
身長も実力も成長目覚ましい凡田を見て、西浦は凡田の方が格上でエースに相応しいと感じるようになる。
悔しさを抱えながらも西浦はエースナンバーを凡田につけるよう監督に直談判し、自らは凡田に教えるモードへ。
しかし西浦が自分のドラフトに向けた評価を捨ててまで期待を寄せたことがかえって凡田のプレッシャーになってしまう。
調子を崩したうえに苦手とする大野率いる海藤大長坂との試合では完全に怖気づいてしまう凡田。
それでも監督と西浦はエースとして凡田を先発させることに躍起になり、凡田は「負けても知ったこっちゃない」と開き直った。
大雑把で無造作なピッチングが奏功し、苦手としていた相手を完封。
西浦からエースナンバーを奪った凡田の活躍に、スパイダース以外のスカウトたちも目をつけ始めるのであった。
【10巻のまとめ】
人生初の日本シリーズでは緊張とプレッシャーから全くいいところのない凡田と丸金だったが、後がなくなったところで開き直る。
幸運の女神も味方して風向きが変わり、最終戦では印象的な活躍でチームは日本一に輝いた。
丸金がシリーズMVPを受賞、凡田は惜しくも受賞を逃したが、果たして今オフの契約更改はどうなるのか―。
次巻へ続きます。
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