弱小の大太刀高校相撲部に現れた1年生、"小さき"少年・潮火ノ丸は実は小学校時代には〈鬼丸〉と呼ばれる次世代の横綱候補だったが、中学時代は体格的なハンデのため、無名の存在となっていた。
これはそんな火ノ丸が体格差と言うハンデを乗り越えて高校相撲、そして大相撲の舞台で夢を掴むまでの挑戦である。
登場人物紹介
<大太刀高校(ダチ高)>
潮 火ノ丸(うしお ひのまる)/鬼丸 国綱(おにまる くにつな)
本作の主人公。小学生相撲二冠王となり、その鬼のような強さから、国宝「鬼丸国綱」の異名で将来を嘱望された少年。しかし、中学時代は身長がほとんど伸びず、無差別級競技である相撲において公式戦で実績をほぼ残せなかった。周囲から終わった選手と思われたが、裏で体格差を帳消しにする地道で過酷な「三年先の稽古」を積み続けていた。そして高校入学を期に再び頂点を目指し、相撲界に復帰する。角界入り後は柴木山部屋に入門。
小関 信也(おぜき しんや)/太郎太刀 信也(たろうたち しんや)
3年生。相撲部の部長。廃部同然の弱小相撲部で「大関」の呼び名でからかわれていた少年。初登場時は中学時代から5年間公式戦未勝利、部員に手を出さないという条件付きで道場を佑真ら不良たちに占拠されていた。ダチ高一の腰抜けと罵られるも、2年間1人で相撲部を守っていた。道場が使用不能の時も、トレーニングや西上高校への出稽古などで稽古は怠っていない。
優しく真面目で、常に気配りもできる常識人。気が弱く卑屈な面もあり、おおよそ格闘技向きではない性分。大太刀高校を卒業後、長門部屋に入門。
五條 佑真(ごじょう ゆうま)
3年生。五條礼奈の兄。ダチ高不良グループのリーダーとして初登場する。空手の有段者[注 6]で、入学以来喧嘩で負けたことが無く、「ダチ高最強の男」と持て囃されていた。
空手・喧嘩の経験を相撲に生かし、突っ張りといなしを主体とした取り口を得意とするようになる。相撲に真摯に向き合うにつれ、不良時代の振る舞い(特に小関に対する横暴)を省みるようになり、自身の非行が原因で確執があった恩師・高荷との経緯を経て、「覆水を盆に返す」という言葉を胸に改めて自身の勝利で部に貢献する決意を固める。
國崎 千比路(くにさき ちひろ)
2年生。レスリング部員→相撲部員。国体で個人戦優勝するほどの実力者。将来は総合格闘技選手として全米の頂点に立つ事を夢見る高校生。
総合格闘技に必要な相手を押しこむ力、倒されない強靭な足腰を身に付けるべく入部する。
技を習得する勘、動きのツボを見抜く確かな観察眼を持つ類い稀な格闘センスは、沙田や火ノ丸にも「天才」と言い切らせるほどであり、元横綱・駿海にも「金の卵」「相撲に進まないのは勿体ない」と評価される才能の持ち主である。また、格闘技漫画には珍しい味方側にありながら相手の技をコピーするキャラクターでもある。
シングルマザーで子持ちの姉と、栄華大附属相撲部所属の兄・真磋人、相撲好きの祖父、妹と弟が一人ずついる。
三ツ橋 蛍(みつはし けい)
1年生。元音楽部員。中性的な顔立ちをした小柄な男子高校生。気弱で同級生の火ノ丸に対しても「さん」付けで呼び、丁寧語で話す礼儀正しい性格。千比路からは「ホタル」と呼ばれる。
6歳からフルートをやっていたが、スポーツ経験は乏しく、ひ弱な体つきの自分にコンプレックスを抱いていた。自分と同じように小柄な体格ながらも大きな相手に立ち向かっていく火ノ丸の雄々しさに感化されて相撲部入部を決意する。火ノ丸のような真っ向勝負に憧れるも、強豪校相手には戦力になり得ない現実を桐仁から告げられたが、ダチ高の勝利のためなら憧れを捨てる覚悟がある事を気丈に宣言する。
辻 桐仁(つじ きりひと)/鬼切 安綱(おにきり やすつな)
1年生。火ノ丸の幼馴染。相撲部監督。火ノ丸とは小学生時代に同じ相撲クラブで稽古に励んだ無二の親友。力士として火ノ丸と互角に渡り合う実力を持つが、20秒以上戦うと窒息し、生命さえ危うくなる先天的な肺機能の障害(現実の角界にも、舛乃山ら戦える時間が限られる力士が実在する)を患っている。これは小学生の時に発覚しており、未だ治療法は見つかっていない。一時は自身の運命に絶望し相撲の全てを自分から遠ざけたが、過酷な現実に抗い続ける火ノ丸を目の当たりにし、彼を支えるべく独学でマネジメント学・監督論等を身に付けダチ高にやってきた。
五條 礼奈(ごじょう れいな)
2年生。生徒会副会長で、ミスダチ高。金髪の美少女で佑真の妹。表向きはダチ高のアイドル的存在だが、実際は気に食わない相手を徹底的に潰そうとするなど腹黒い性格。それゆえ男子から人気とは裏腹に、女子受けはかなり悪い模様。兄の佑真には「ブラコン」とも思える感情を抱き、佑真の前では「かわいい妹」の面を見せる2面性を持つ。
堀 千鶴子(ほり ちづこ)
1年生の女子。眼鏡で三つ編みが特徴、大人しい優等生タイプ。相撲部の戦いぶりに感銘を受け、マネージャーとして入部する。
<石神高校相撲部>
沙田 美月(さだ みづき)/三日月 宗近(みかづき むねちか)
1年生。相撲部のエース。異名は国宝「三日月宗近」。
軽い言動が多く、主将・金盛の目を盗んで稽古をサボろうとする軽薄者だが、天性の運動神経を誇り、中学から相撲を始めたにもかかわらず、3年時には「中学横綱」に君臨した実力者である。
幼少期から抜群の運動神経を誇るが、相撲にも存分に生かされており、離れて相撲を取る相手には「いなし」、廻しを掴んでくる相手には「おっつけ」で対処する取り口を主体とする。力士としては軽量だがその敏捷性と平衡感覚で相手を翻弄しつつ、相手の圧力をカウンターで利用する「上手出し投げ」を得意とする。「修羅の相」を発現した際は、相手の動き出しを先読する資質と相まって、消えたと錯覚させるほどのスピードを実現した。中学時代から廻しをほとんど取られることはなく、彼の廻しは新品同然であると謳われていた。
金盛 剛(かなもり つよし)
3年生で、相撲部の主将。異名「金剛力」。
不良の佑真をして「ヤクザ」と形容されてビビらせる強面の巨漢。
沙田と同じ相撲クラブ出身。彼の軽薄な言動やサボり癖に腹を立てるも、期待の1年生として目をかける。
体重90kg以上の沙田を片腕で放り投げる剛腕で、それを活かした右四つが得意。また、突き押し相撲も上手く組んでも離れても器用に立ち回れるオールラウンダー。
真田 勇気(さなだ ゆうき)
3年生。小学3年生から10年近いキャリアを持つベテラン力士。
眼鏡をかけ、強面の金盛とは対称的に柔和な顔立ちをしている。基本的に面倒見の良いおおらかな性格だが、時に素行に問題のある荒木を含めた不良たちを黙らせる威圧感を放つ。
イタズラ半分で相撲道場に放火しようとした不良グループを止めるべく、部に迷惑がかからぬよう自ら退部してから、不良30人を一人で倒したことがある。しかしこのことから「小三でリーゼント、小六でヤクザにスカウトされるなど、小学生時代から筋金入りのヤンキー。
荒木 源之助(あらき げんのすけ)
1年生。中学時代に柔道日本一なった実力者で、総合格闘技で頂点を取る夢を持ち、その過程で相撲を始める。
入学直後停学になり、相撲部の稽古も1日しか参加できなかったが、その日だけで金盛が「秘密兵器」と称するほど才覚を見せた。
間宮 圭一(まみや けいいち)
2年生。スキンヘッドの厳つい顔と、予選出場選手中最大とされる圧倒的な巨体が特徴。
<栄華大附属高校相撲部>
久世 草介(くぜ そうすけ)/草薙 草介(くさなぎ そうすけ)
1年生。大横綱・大和国の息子。異名は眠れる国宝「草薙剣」。
小学生の時から相撲を取り続けるが、小学4年のとき取組で狩谷に大怪我を負わせ、父から「あいつが出ると他の若い芽を摘んでしまう」と試合出場を禁じられた。以降は公式戦に一切出ず、名門・栄華大附属に入学後も部では狩谷と共に偵察やビデオ撮影など、実力不相応な雑務担当に甘んじた。しかし、父の相撲部屋での稽古と現役力士たちとの実践練習を幼少期から欠かさず、戦績がほとんどない時期にも相撲関係たちから才覚・実力を期待され、眠れる国宝「草薙剣」として注目されていた。
右四つの取り口を主体としているが、その体格と圧倒的な膂力によって多少形が悪くても十分に組み合うことができる。右の上手投げを得意としており、これを父である大横綱・大和国から血とともに受け継いだ「天命の型」と自称し、絶対の誇りと自負を持つ。ただし、離れていても突き押しなどで対処できる器用さや、体格に似合わず千比路の動きについていけるほどのスピードも兼ね備えている。
狩谷 俊(かりや しゅん)
1年生。目つきが悪く、草介とは対称的な小柄な体格。
火ノ丸のように体格に恵まれず、憧れである大和国のような横綱相撲を否定され、挫折を経験する。しかし、彼の場合はそれを早々と受け入れ小兵であることを最大限に生かしたスピードとテクニックを駆使し、素早く相手の懐の下へ潜り腰を浮かせ多彩な足技で狩る取り口を持ち味として結果を出す。
草介とは小学生からの幼馴染だが、小学4年時の取組で草介に怪我を負わせられた。
四方田 尽(よもだ じん)
3年生。相撲部主将。「ヤバい」が口癖。個人戦出場権を狩谷に譲ろうとするなどすぐに弱音を吐くが、昨年度のインターハイでは2年生で唯一レギュラーに選ばれ、「チームの為に泣ける」性格を買われ主将を託される。天王寺や加納からは実力者と評価されている。
澤井 理音(さわい りおん)/清心道 理音(せいしんどう りおん)
2年生。「相撲は大きく重くなければならない」と考える。パワー・スピードを高いレベルで持ち合わせるが、クレバーさも兼ね備えている。
兵藤 真磋人(ひょうどう まさと)/大般若 長光(だいはんにゃ ながみつ)
3年生。國崎千比路の実兄。ノリの良い軽快な性格。両親が離婚し、父親に引き取られ兵藤姓となる。幼少期から千比路の興味を持った分野を後から始めては彼以上の才能を発揮して去っていくため、千比路から一方的に敵視される。千比路に輪をかけた傍若無人さを発揮しており、空気が読めない。
高校入学後ラグビー部と柔道部をクビになり、最後に行き着いた相撲部でケンカをふっかけるも返り討ちに遭い、相撲部に入部する。相撲歴2年目で栄大相撲部のレギュラーを勝ち取り、潜在能力は国宝級だがあまりにもトリッキーな取り口で墓穴を掘ることもあり、国宝とは呼ばれない最大の理由は辻曰く「バカだから」。
ダニエル・ステファノフ/大欧牙 栄一(だいおうが えいいち)
2年生。ブルガリア出身の留学生力士。ブルガリア出身の大相撲力士の活躍で相撲に興味を持ち、幼少期にテレビで見た大和国に影響されて彼と日本文化のファンになる。留学当初は「ただデカいだけの相撲オタク」と呼ばれるほど弱かったが、大和国の息子である久世が入部すると彼の影響を受け、彼と稽古を重ねて素材は国宝級と呼ばれるまでに急成長する。
<鳥取白楼高校相撲部>
天王寺 獅童(てんのうじ しどう)/童子切 安綱(どうじきり やすつな)
3年生。相撲部主将。国宝「童子切安綱」。昨年度・一昨年の高校横綱。中学3年で中学横綱、小学6年で小学横綱の座に就いた。高校入学以降から公式戦無敗、さらには全日本選手権においても社会人・大学生らの年上の強者たち相手に優勝、名実共に全アマ力士たちの頂点に君臨する。その実力は白楼出身の先輩である現横綱・刃皇をして、自分に引導を渡すかもしれないと警戒されるほどである。
挑戦者時代の守りを捨てて本能だけで戦う「攻める相撲」と、高校横綱の地位を築いてから相手の出方を見て最善の型で勝利する「守る相撲」を主体とする。この2つを場面によって臨機応変に使い分け、どんな形でも高い標準でこなすことができる。前述の小兵時代の経歴と、相手を研究し続ける勤勉さがその基盤となっており、対戦相手に見せ場を与えずに征服する相撲を得意とし、これを自身の「横綱相撲」と称している。
天王寺 咲(てんのうじ さき)
1年生。マネージャー。天王寺獅童の妹。休みに上京し、相撲部屋入りを考える兄のため各相撲部屋を見学する。小柄で純朴な外見にそぐわぬ観察眼の鋭さ、抜目の無さを垣間見せる。
バトムンフ・バトバヤル/白狼 昇(はくろう しょう)
1年生。モンゴルからの留学生。略称でバトと呼ばれることが多い。
子どもの頃、テレビで見た大和国・薫山に憧れモンゴル相撲(ブフ)を始める。ナーダム優勝経験があり、選抜テストをクリアし鳥取白楼に留学して来た。相撲での栄達を求め日本に来たこともあり、当初は徹底した実力主義で、同じモンゴル人留学生の上級生や天王寺にも食ってかかる有様だった。しかし天王寺に格の違いを見せ付けられ礼儀作法を叩き込まれた後は彼をアニキと慕い、多少は節度ある態度を保つようになった。モンゴル相撲ならではの多彩な組技で相手を圧倒し常勝軍団の一翼を担う。
加納 彰平(かのうあきひら)/大包平 彰義(おおかねひら あきよし)
3年生。国宝「大包平」。「天王寺の次に強い」ことがプライド。父親は鳥取白楼相撲部の監督。嫌なことがあれば唐揚げを揚げる。
榎木 晋太郎(えのき しんたろう)
2年生。合気道を主体にした相撲スタイル。天王寺の中学の時からの後輩で、当時は結果が出ずに1度相撲を辞めようとするも、天王寺の言葉で奮起。相撲に合気道の要素を取り入れることで現在のスタイルを確立、選手層の厚い鳥取白楼のレギュラーにまで上り詰めた。
首藤 正臣(しゅとう まさおみ)
3年。小学生の時から相撲大会でよく会っていた天王寺とは仲が良い。高校卒業後は長門部屋に入門するが、相次ぐ怪我で相撲の意欲が低下してしまい廃業。第二の夢である、動物飼育員を目指して動物園で働く。
<金沢北高校相撲部>
日景 典馬(ひかげ てんま)/大典太 光世(おおでんた みつよ)
2年生。国宝「大典太光世」。身長2mを超す恵まれた体躯の持ち主で、早くも角界入りを嘱望されている。現役日本人最強力士である大関「大景勝」の弟だが、兄が刃皇という壁に突き当たり上昇志向を失ったと思い込んで失望し、一刻も早く大相撲で名を上げたいという焦りから周囲と衝突を繰り返した。
相沢 亮(あいざわ りょう)
3年生。相撲部主将。にこやかな笑顔を絶やさないが、本来は血気盛んな性格で喧嘩も強いらしい。
<川人高校相撲部>
大河内 学(おおこうち まなぶ)
1年生。眼鏡をかけたインテリ風の力士。去年の全中大会の1回戦で膝の怪我が原因で沙田に敗れてから彼をライバル視する。
理屈っぽい自信家で、相手を見くびっては痛い目に遭うお調子者キャラだが、相撲に対しては真摯で、練習にも人一倍熱心。
<その他高校相撲部関係>
下山 倫平(しもやま りんぺい)
常磐第三高校相撲部所属。えげつなく品がない性格。恵まれた体ながら取り口も変化を好む。力士としての実力は全国区とは言えず向上心も乏しいが、国宝のような格上相手にのみ異様なモチベーションと勝率の高さを誇る。中学時代、火ノ丸に3連勝して彼を表舞台から去らせ、名塚から「鬼丸殺し」と称された。
野地 数興(のじ かずおき)/「数珠丸 恒次(じゅずまる つねつぐ)」
三ノ矢実業高校相撲部3年生。国宝「数珠丸恒次」。米屋の長男。力士の体格の理想を体現したような男だが、天王寺や久世には及ばない。
<大和国部屋>
大和国 清一(やまとくに せいいち)
久世草介の父。作中で最後の日本人横綱。現役時代は横綱「大和国」としてパワーで勝る外国人力士とも互角以上に渡り合い、幕内優勝回数は31回を誇る大横綱。力士としての実力だけではなく、国民栄誉賞にも選ばれ、火ノ丸らの世代の学生力士の多くが憧れや目標を抱き、相撲に興味や関心の無いものですらその名を知らぬ者は無いといわれるなど、名実ともに国民的大横綱といっても過言ではない人物である。
大和号 司(やまとごう つかさ)
21歳。火ノ丸ら「国宝」たちと同世代だが高校には進学せず、中卒でプロ入りし実力を伸ばしてきた三人の若手力士「天下三名槍」の一人。
草薙と同様に口数が少なく無愛想だが生真面目な性格。ぶちかましは角界一と言われ、大和国部屋では草薙に次ぐ期待の星と言われる実力を持つ。
<柴木山部屋>
柴木山 明雄(しばきやま あきお)
柴木山部屋の親方。四股名は薫山 明雄(かおるやま あきお)。本名は佐山 薫(さやま かおる)。最高位は西関脇。
大相撲力士としては恵まれた体格でなかったが、小兵ながら真っ向勝負に拘り続け、その苛烈でうるさい攻めから「爆竹」の異名をとった。たゆまぬ努力で徐々に頭角を現し、晩節には全盛期の大和国に土を付け、自身の相撲人生最大の金星としている。引退後は柴木山親方として角界でも一、二を争う猛稽古と評判の指導を行うが、彼自身の現役時代の稽古や親方となった頃の指導に比べればこれでもまだ温い方だという。
顔は怖くやくざ風の外見で、事ある毎に檄を飛ばす迫力は現役時代から衰えず、稽古中は厳しく指導を行うが、稽古以外では至って面倒見の良い性格で、部屋の力士たちとの関係も良好。
冴ノ山 紀洋(さえのやま のりひろ)
柴木山部屋の部屋頭(その部屋での最高位の力士)。本名長谷川紀洋。柴木山親方からは「紀ちゃん」と呼ばれる。ポーカーフェイスが特徴的で、親方は勿論、格下の力士に対しても敬語口調で話す。基本的には穏やかでマイペースな性格だが相撲に対する姿勢は真摯で、柴木山親方の遺志を継ぎ彼が果たせなかった「横綱」志す。時には厳格かつ情け容赦ない面を見せる。
薫丸 弘樹(かおるまる ひろき)
番付は東幕下2枚目から十両。27歳。部屋の中では「丸さん」と呼ばれる。
同期の冴ノ山とは仲が良いが、順調に出世した彼とは対照的に才能に恵まれなかった苦労人。親方からの引退勧告も経験しつつも、冴ノ山の付き人下積み生活を耐えつつ、入門から12年で十両昇進を決めた。しかし、十両として初の土俵となる予定だった秋場所直前の合同合宿稽古で蜻蛉切から睨まれ、膝に致命的重傷を負わされる。巡業も休業し、力士生命も危ぶまれるが、火ノ丸と蜻蛉切の取り組みを見て再起を決意し、手術が成功後は蟹江の下でリハビリに励んでいる。
寺原 拓哉(てらはら たくや)
柴木山部屋に高校を卒業して入門したばかりの新弟子力士。関東の新人戦ではベスト3に入ったほどの実力者で、柴木山部屋での火ノ丸の最初の稽古相手となるが、彼には全く歯が立たない。自分より圧倒的に強いにもかかわらず小柄というだけでプロ力士への道が閉ざされている火ノ丸の素質を惜しみ、親身に接する。
<朝陽川部屋>
刃皇 晃(じんおう あきら)
本名は、ダワーニャウィン・ツェウェグニャム。モンゴル出身で、鳥取白楼高校留学から角界入りした現役最強横綱。晩年の大和国を引退に追い込み、自らは優勝44回を数える横綱となった。既婚者で、土俵の外では姉さん女房の由美に頭が上がらないらしい。普段は立場相応の威厳と風格を供え、一方で格下の力士にも明るく接する気さくさを見せる大人物。しかし、突然子供のように泣き出す、口汚い言葉で相手を威圧するなど情緒の波が激しい。特に時折垣間見える暴力的な一面は、「相撲をやっていなかったらどうなっていたかわからない」と評される。物事を熟考する際、脳内に性格の違う『刃皇』が多数現れ議論する「刃皇会議」が開かれる演出がなされ、多彩な側面を持つことが表現される。しかし、そうした幾つもの顔を見せつつ、「相撲を心から愛し、角界の将来を憂えている」という姿勢は一貫している。
<鈴ヶ嶽部屋>
大友 優清(おおとも ゆうせい)/大景勝 優清(だいけいしょう ゆうせい)
優勝経験はないが、日本人最強力士と目される大関。本名は日景 優清(ひかげ ゆうせい)。日景典馬の実兄。
大関になって以降1度も負け越したことは無いが、年の離れた弟から刃皇の圧倒的な強さを前に、横綱を諦めていると思われており、尊敬と軽蔑が入り交じる複雑な感情を抱かれる。
鈴ヶ嶽孝晴(すずがたけ たかはる)
元大関。現役時の四股名は巖嵐孝晴。本名は浅井孝晴。日本人最強の大関と言われた大景勝を育て、兄の大景勝に対する学生時代の典馬(後の大典太)の間違った偏見を正す役割を担い、親方としての指導力は高い。大景勝の引退後は、大典太を将来の横綱とすることを目標とし、彼の才能に並みならぬ期待をかける。
<見島部屋>
蜻蛉切 瑠偉(とんぼきり るい)
20歳。「天下三名槍」の一人。日本人の母とイギリス人の父のハーフで、欧州系力士と日本人力士の長所を併せ持つ豪腕正当派。なお、生まれも育ちも日本で英語も喋れない。相撲以外の特技はサッカー。
新弟子時代、ハーフというだけで注目されていると先輩力士たちから陰湿なイジメを受けたことで性格が歪み、復讐のために稽古を重ね、先輩たちの番付を抜いた時点で彼らに制裁を加えて部屋から追い出した。その後も自分より番付が下の者に横暴な態度をとり、付け人は彼の横暴に耐えかねて何人も辞めている。
才能がないのに無駄な努力をする力士を嫌い、特に体が小さい火ノ丸を目の敵にする。
<安曇野部屋>
百乃花 吉美(もものはな よしみ)
角番の西大関。大景勝と同様に刃皇に勝利経験のある数少ない日本人力士。「〜のね」という特徴的な喋り方をする。
巨兜 太郎(おおかぶと たろう)
29歳。ハワイ州オアフ島出身。九月場所時点で番付は西小結。本名はジョージ・フイアマル・ワイラニ・アティサノエ。幕内最重量の260kgの巨体を活かした押し相撲を評価される。
<巽部屋>
金鎧山 隼人(きんかいざん はやと)
番付は東大関。モンゴル出身。過去二回の幕内最高優勝経験を持ち、大関の地位を6年も守り抜いている実力者。
既婚者であり、家族想いで紳士的な好人物故に品格も評価され、一時は刃皇の後継者と言われていた。しかし優勝した翌場所で負け越し、綱取り失敗してからは上に上がることに消極的になり、より力士寿命が長い大関の地位に知らず知らずのうちに満足してしまっていた。
<その他現役力士>
御手杵 忠(おてぎね ただし)
20歳。九月場所の番付は東関脇。「天下三名槍」の一人。
懐の深さと柔軟性で相手を飲み込む、長身の技巧派力士。お調子者の性格で、先輩力士でも衰えの目立つ力士をからかい見下す傾向があるが、認めるべき部分は素直に認める。歌が上手く、CDを出している。
三尾錦(みおにしき)
我が強くやや高圧的な人物。
番付が全ての角界でそれを持たぬ火ノ丸を虫ケラと一瞥する。それでも自らに挑んできた彼に1度は百千夜叉堕を決められるが、すぐさまリベンジを果たし幕内力士としての実力を示す。初物が苦手な模様。
岩竜(がんりゅう)
実力はあるが我が強く、やや傲岸不遜な人物。
<その他大相撲関係者>
駿海 登喜雄(しゅんかい ときお)
柴木山親方の師匠で、角界の長老的存在。本名は尾川登喜雄。現役時代は幕内優勝11回の名横綱で、親方としても2人の横綱を育てた実績を持つ名伯楽。定年のため既に相撲協会から身を退いた隠居だが、老いてなお現役の関取衆を恐れさせる威圧感で角界に睨みを利かせ、火ノ丸の修行相手に横綱を含む数多くの現役力士を呼び付けるなど、未だその権力は計り知れない。
長門親方(ながとおやかた)
駿海の弟子で、元横綱。現役時代の四股名は駿勇。大相撲編時の年齢は53歳。駿海の要請で長門部屋を立ち上げる。同じ駿海の弟子である柴木山親方とは、兄弟弟子の間柄。
<その他の登場人物>
高荷 志帆(たかに しほ)
佑真がかつて通っていた空手道場の女性師範。
ケンカが原因で佑真を破門した。過去の無礼を謝罪した上で相撲で使える空手技を身につけるべく教えを乞う佑真に対し、空手を悪事に使ったことを許さず、「覆水盆に返らず」として拒絶する。しかし、稽古が引けたあと再訪した彼の偽りなき決意を目の当たりにし、彼を正しい道に指導できず悔やんでいたことを打ち明け、相撲にも使えそうな技を伝授すべく稽古をつける
蟹江 哲治(かにえ てつじ)
柴木山親方が現役時代から贔屓にする医者。専門整形外科。
外見的には不良爺風で医者に見えず、外観こそ廃墟同然の診療所で治療を行う。しかしスポーツ医学に精通し、高額の医療機器を取り揃え、医者としては非常に優秀(本人曰く「無駄なことはしない主義」)。
鞘野 由美(さやの ゆみ)
刃皇の妻。銀座の元ホステスで、見目麗しい美女。惚れこんだ刃皇が口説き落として結婚に至った。
夫より2歳上の姉さん女房で、刃皇は彼女に頭が上がらない。常に冷静沈着で一見キツめな印象を与えるが、刃皇を時には叱咤し時にはサポートするなど横綱の妻としての立場を自覚し、相応に振る舞う。
結婚の際に後援会と揉めて以降、今も後援会とは関係が良くない。
久世 実和子(くぜ みわこ)
草介の母親で大和国親方の妻。39歳。草介を「草介さん」と呼ぶ。相撲に関心があるが、見るのは怖いとして直接観戦することは少ない。元歌手で、共通の知人の紹介で大和国と知り合った。
潮 恵子(うしお けいこ)
火ノ丸の母親。故人(享年34歳)。生前は相撲に打ち込む火ノ丸を応援し、夫が亡くなってからは女手一つで彼を育て、現在の火ノ丸の相撲に対する姿勢にも影響を与える。学生時代は素行が悪く、夫とは駆け落ち同然で家を飛び出した。その後は各地を転々とし、火ノ丸の特徴的な口調が身に付くきっかけにもなる。なお、駆け落ち同然に家を飛び出してはいるが、両親との関係は比較的良好だった模様。