演奏を辞めてしまった天才ピアニストの有馬公生と自由に演奏を楽しむヴァイオリニストの宮園かをりが友人の紹介の付き添いという形で出会いを果たす
しかし公生は母親の死がきっかけでピアノを辞め、ピアノの音色が聴こえなくなる症状に悩まされていた。
そんな公生の悩みをよそに、かをりは次のコンクールの伴奏に公生を指名。
ピアノの演奏を恐れていた公生だが、かをりに手を引かれてコンクールに出場することになった。
公生はピアノの音色が聴こえずに一度は演奏を止めてしまうが、かをりに背中を押され、観客を感動させる演奏を披露した。
もうピアノを弾かないと思っていた公生だったが、自分の音楽が届いた瞬間を忘れることができず、もう一度、演奏家として歩みだすことを決意。
自分を表現するような演奏ができずに悩む公生だが、かをりとの交流を通じて前を向く。
一方、幼馴染の椿は公生がピアノにのめり込む姿が心配になり、遠くへ行ってしまうんじゃないかと不安になっていた。
そして迎えたコンクールでは幼いころからのライバルの相座武士と井川絵美と再会。
公生を憧れの対象として強く意識してきた武士と絵美が素晴らしい演奏を披露する一方、公生は母との暗い過去が呪いのように蝕んできたが、かをりのためだけにピアノを演奏することで復活。
その演奏はまるで片思い。一途な想いが観客を魅了していた。
コンクールの予選は通過できなかったが、公生はそれでも前を向き、母の好きだった曲『愛の悲しみ』を通じて、母親と向き合っていく。
次のガラコンサートではかをりと一緒に出場を予定していたが、当日にかをりの姿がない。
公生は1人ステージへと立ち、一度は激情に任せた演奏をするも、母の愛情を思い出し、愛にあふれた演奏を披露するのだった。
7巻のあらすじを振り返ってみましょう。
演奏を通じて母への別れを告げる
藤和ホール・ガラコンサートで公生は亡くなった母のことを想いながらピアノを演奏していた。
母はどんなふうにピアノを弾いていたのか、思い出を1つ1つ辿るように。
公生の師である紘子は、公生の母とのやり取りを思い出していた。
公生が小さかった頃、素敵な演奏をしたのに叩いて叱っていたときのことだ。
公生の母は決して怒りで手を上げていたわけではなかった。
自分の命が残りわずかだったから、なんとかピアノを上達させなければいけないという義務感から厳しくしていたのだ。
そんな亡くなった友人を思い出しながら、公生のピアノの音色を聴いていると胸が熱くなってくる。
公生は自分は母親に恨まれているのではないかと不安に感じていた。
しかし紘子はわかっていた。
子供を憎む母親なんていないということを。
公生は心から母親から愛されていた。
そして公生もピアノの演奏を通じて気づいていた。
母の恐ろしい亡霊は自分が作り出した幻影でしかないということ、本当は愛されていたということ、そして母親の優しさや温もりは自分の体の中にたしかに残っていることに。
公生の目の前から母の幻影はもう消えていた。
「さよなら」
公生は母への別れを告げ、演奏を終えた。
亡くなった母と重なるかをり
翌日、ガラコンサートでヴァイオリンを弾く予定だったかをりは病院のベッドの上にいた。
いらっしゃいと病室のベッドで出迎えるかをりの姿は、亡き母が入院していた頃を思い出させる。
かをりは明るく元気に話しながら、元々疲れやすい体質で最近は練習が多かったから体調を崩してしまったから心配しなくていいのだと言う。
だが、かをりは無理をしていた。
額には汗をかいて疲れた表情、公生たちが帰ってすぐに点滴に繋がれる。
ある日、公生は再びかをりの病院にお見舞いに来ていた。
公生はかをりに聞きたいことがたくさんあった。
本当に大丈夫なのか、検査は嘘じゃないのか、もう学校に来ないなんて言わないか。
しかしその言葉を口にすることはできなかった。
かをりはガラコンサートで公生が1人で演奏した理由を聞いた。
最初はかをりを馬鹿にされたことへの怒りだったが、途中からは母親との思い出を思い出しながら演奏していたと答える。
そして公生は、かをりがクライスラーの『愛の悲しみ』を選曲したのは自分のためだったんだと気付く。
椿が自分の気持ちに気付く
椿は自分の心にモヤモヤを抱えていた。
弟のような存在だと思っていた公生が、ガラコンサートの演奏後に急に違った人に見えていたからだ。
友人の奈緒は、椿には一人っ子で弟なんていない、弟という言葉を暗示のように唱えて今の仲良しの関係を壊さないようにしているだけだと言う。
だが椿はそんな奈緒の言葉に反発する。
付き合っている先輩は夏祭りのデートで椿の浴衣を見てかわいいと言ってくれた。
公生はそんなことを言わないからだ。
その後も椿の頭の中から公生の存在が消えることはなかった。
先輩とデートをしていても、つい公生のことを話してしまう。
先輩のことは嫌いじゃない。
だが「好き?」と聞かれると頭に疑問符が浮かぶ。
椿が家に帰る途中、公生が焦ったように走ってきた。
椿が大変だと聞かされて走ってきたらしい。
だが椿には何も問題はない。
公生はすっかり騙されたと落胆と安堵の様子。
近くの浜辺を2人で歩く。
椿は公生のことを以前のように見ることができない。
目が合うと心臓の鼓動が高まるのを感じていた。
すると公生は音楽科のある遠方の高校に進むことを椿に告白した。
今の家から通えないから家を出ていくのだと言う。
それを聞いた椿の目からは涙が溢れた。
今まで隣にいるのが当たり前だった公生がいなくなってしまうからだ。
椿はようやく自分の気持ちに気づいた。
椿は公生のことが好きだったということに。
【7巻のまとめ】
ガラコンサートの演奏を通じて公生が母との決別を果たすこととなった。
しかし、かをりが再び入院することになり、公生は亡くなった母の姿を重なて不安に感じていた。
一方で椿は公生に対する気持ちはずっと弟に向けるものだと思っていたが、公生が家を出ることを告げたことで、恋愛感情だったことに気付く。
次巻へ続きます。
この漫画をもう一度読みたい方はこちら
全巻まとめに戻る
-
参考トラウマを抱える天才ピアニストの少年と薄幸の天才ヴァイオリニストの少女の共鳴と成長、涙なしには読めない青春ストーリー『四月は君の噓』全11巻【ネタバレ注意】
続きを見る