リカオンズ悲願の優勝を目指す”悲運の天才打者”児島は、ミニキャンプに来た沖縄で1打席勝負の賭け野球「ワンナウト」で無敗を誇る天才勝負師・渡久地東亜と出会う。
速球も変化球もないが並外れた度胸、洞察力と読心術で相手打者を翻弄する渡久地を児島は勝負への執念で破り、渡久地は児島に従って「リカオンズを優勝させる」という目的のもと入団することとなった。
球団経営を銭勘定でしか考えないリカオンズオーナーの彩川と「1アウトで+500万円、1失点でー5000万円」という完全出来高制の年俸契約(通称:ワンナウツ契約)を結び、渡久地のプロ野球選手としてのシーズンが始まる。
既に球団売却を水面下で進める彩川オーナーはワンナウツ契約に具体的な条件をつけ有利に進めようとするが、渡久地は相手打者や彩川オーナーを手玉に取り荒稼ぎをしていく。
渡久地はパ・リーグの最強王者マリナーズとの3連戦に全試合先発させられながらも見事に大幅な収支黒字で切り抜け、ホームスチール成功率100%の最速男ジョンソン擁するバガブーズ、ホームスタジアムでイカサマを駆使する悪質球団ブルーマーズも破った。
膨れ上がる渡久地の年俸を前に、彩川オーナーは2軍で戦力外寸前のムルワカ・倉井・菅平のポンコツ3人衆とセットにして渡久地のトレードによる放出を模索するが、渡久地は「リカオンズを優勝させる」という約束を果たすため、ポンコツ3人衆を対象に含めた新・ワンナウツ契約を提示して残留を果たす。
渡久地がいかに活躍してもポンコツたちが足を引っ張れば収支改善できると踏んだ彩川オーナは、渡久地が先発しない試合で新・ワンナウツ契約のレートを釣り上げて一気に負債回収を狙う。
一方、ムルワカと倉井の潜在能力を見抜いていた渡久地。
強豪フィンガースとの試合で先発した倉井は不甲斐ないピッチングで大ブーイングを浴びるが、満塁の大ピンチに恩師である南田先生が応援に駆け付け、集中力を研ぎ澄ました倉井は世界最速となる165kmもの豪速球を連発するように。
倉井へのブーイングは一転して大歓声に代わり、リカオンズが勢いづいていく。
流れを切りたいフィンガースは絶好調のエース河中をリリーフで投入、対する渡久地は代打でムルワカを送り出すのだった。
13巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
ムルワカが河中からホームラン
ボールを怖がるムルワカの弱点は克服されたわけではない。
それでも渡久地は自信満々。
渡久地の読み通り、ムルワカは河中の渾身のストレートを見事にバックスクリーンに叩き込み、3打点を挙げてみせた。
〈ムルワカがホームラン [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
新・ワンナウツ契約でも30億円の黒字を挙げ、彩川を仰天させるのだった。
ムルワカを覚醒させた仕掛け
ムルワカにかけたマジック、そのヒントはムルワカが「どんな球にも振り遅れる」というところにあった。
それはつまり、タイミングをとる能力に秀でているが、それに身体を合わせようとするときに無意識に腰が引け、そのせいで振り遅れるというもの。
〈ムルワカの本来の姿 [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
渡久地は腰が引けるのを治すのではなく、ムルワカの体感スピードに修正を加える。
至近距離から体感220km近いストレートを味わわせ、その後に打席に送り込んだのである。
220kmに合わせて振り遅れていたムルワカにとって、振り遅れたスイングがうまく160kmの河中のストレートを捕えたのである。
〈体感速度を調整 [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
この場面でリリーフに河中が出てくることを読み切ったうえでの用意周到さに、三原をはじめカラクリを知った者は脱帽するのだった。
追い込まれ焦る菅平
ポンコツ3人衆のなかで、唯一覚醒できずに焦る菅平。
〈焦る菅平 [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
渡久地に自分が向上するヒントを聞こうと甘える菅平だが、渡久地は冷たく突き放す。
そもそも渡久地は菅平にはほとんど期待を持っておらず、トレード話のお供に加えたのも「菅平を見捨てないでほしい」という児島の説得があったからだった。
若い頃はやる気や気合が十分にあった菅平は、ケガでシーズンを棒に振ったのを機に燻るようになったが、児島はまだ菅平が帰ってくることを信じていたのである。
そんな菅平に渡久地は「この試合で結果を出せなかった者は二軍に落とす」と脅す。
〈非情な宣告 [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
倉井とムルワカは結果を出したが、もう試合終盤。
菅平はこのまま打線が回らなければ次の打席を待つことなく二軍に落ち、二度と一軍に戻ってこられない状況に追い込まれるのだった。
菅平の執念
事実上の解雇宣告に焦る菅平は、自分まで打席が回ることを必死に祈る。
〈次の打席を必死に祈る [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
自然と打席に立つ仲間への応援も熱を帯びていくと、渡久地は「ネクストバッターズサークルで必死に素振りをすれば打席が回ってくる確率が高まる」とアドバイスする。
すると渡久地の読み通り、菅平の必死の素振りを見たフィンガースは全く当たっていない菅平に代打が送られないと判断し、あえて勝負を急がずに菅平と後に続く倉井を打ち取ればいいという思考が働いた。
結果として菅平の前の2人が四球を選び、ワンナウト満塁のチャンスに菅平が打席に立つ。
〈菅平のラストチャンス [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
それでも、まだ打席に立つチャンスが回ってきただけで結果を残さねばならない。
生き残るために神にでもすがりたい菅平だが、あっという間に2ストライクと追い込まれてしまう。
ところがこの土壇場で執念を見せた。
打てないながらもインコースを攻めてきた球に思いっきり踏み込み、デッドボールで打点を挙げたのである。
〈執念のデッドボール [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
沖縄で児島が渡久地とのワンナウト勝負で見せたのと同じ戦法。
どよめきが残る球場で、渡久地は続く倉井に意表を突くスクイズを仕掛け、したたかに1点(10億円)をもぎ取るのだった。
ダメ押しのボーナスゲーム
そのまま渡久地・ムルワカ・菅平はベンチに下がり、最終回のリカオンズのマウンドには別の選手が送られる。
このまま何もしなければ新・ワンナウツ契約で彩川が大損をこくことは明白な状況。
ところがここで渡久地はあえて彩川に新たなゲームを提案した。
〈ボーナスゲームの提案 [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
それは「あえて満塁のピンチを作って倉井を登板させる。ただし見事に切り抜けたら特別ボーナスとして20億を彩川が負担する」というもの。
倉井が失点しこれまでの負けを取り返すことに賭けた彩川はこれを飲み、ピンチの場面で倉井がマウンドに送られた。
打席に立つのは4番の天海。
球界を代表する天才打者を相手に倉井は全力の投球。
最後は天海のバットが捉えるが、倉井の球威が勝りセンターフライに終わる。
〈倉井が天海を抑える [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
こうして渡久地はこの試合を多額の黒字で終え、年俸は約60億円にまで到達したのだった。
まだ諦めない彩川オーナー
渡久地への年俸でこれだけ多額の負債を抱えながらも、「カネならいくらでもある」と豪語しまだ諦めない彩川。
〈諦めない彩川 [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
ワンナウツ契約のような完全出来高制は公にはプロ野球協約で禁じられており、球団の帳簿には反映できない一方、渡久地の口座には確実に金が振り込まれている。
いったい渡久地の年俸はどこから出ているのか―。
以降は渡久地が投手として先発すればレートを高くするのは自殺行為、そして先発登板しない場合は渡久地は野手として出場しながら肩を十分に休め、ムルワカと倉井が着実にその穴を埋めていく。
レートを釣り上げて一発逆転を狙う彩川は、次はムルワカを全打席敬遠し打点を稼がせない策に出るのだった。
〈ムルワカは全打席敬遠 [ONE OUTS 13巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
【13巻のまとめ】
渡久地の仕掛けで覚醒したムルワカが河中からホームランを放つ。
さらに菅平も執念で打点を挙げ、新・ワンナウツ契約により渡久地は大金を稼ぎ出した。
それでもまだ一発逆転を諦めないオーナーは、今度はムルワカを全打席敬遠し打点を稼がせない策に出るのだった。
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