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バラ色の医者人生に憧れる研修医が日本医療の闇を思い知る『王の病室』1巻【ネタバレ注意】

講談社/灰吹ジジ・中西淳

豪奢な家に高級外車。絵に描いたような勝ち組を夢見る男がいた。赤城誠一。
不採算経営で"病院潰し"と呼ばれた父を持つ彼は、父を反面教師に「ラクで稼げるクリニック医」を志す。
しかし、研修医となった赤城を待っていたのは、責任に釣り合わぬ報酬と、善意が裏目にでる不都合な現実だった。
高齢化と共に医療大国ニッポンの崩壊は進む。
それでも、現場の医師は目の前の命を救うしかない。
金と情が渦巻く医療サバイバル開幕!

(U-NEXT作品紹介文より引用)

さっそく、1巻のあらすじを振り返ってみましょう。

バラ色の医者人生に憧れる研修医

開業医である父は患者のためを思って診療に励んでいたが、診療所は経営破綻してしまった。

そんな父の背中を見ていた主人公・赤城誠一は、金儲けができる医者になることを志し、研修医として中規模の総合病院に入る。

だが研修医のうちは予想以上に激務で薄給。

36時間連続勤務のうえ、その日は内科の夜間対応の当番。

仮眠は許されているとはいえ、当直中に自分の能力を超える病状を訴える患者がいつ出てもおかしくない緊張から、熟睡はできない。

「王の病室」1巻©講談社/灰吹ジジ・中西淳

眠れない誠一は同じく当直していた総合内科診療科長の獄門院と世間話をすることに。

しかしそこで誠一の夢である「バラ色の医者人生」を手に入れるには、長い研修生活、専門医資格取得を経て安定する必要があり、最速でも30代半ば以降になるという現実を知る。

さらに悪いことに当直のPHSで急患の報せが入り、症例報告の仕事が残っている獄門院の助けなしで誠一が対応することになるのであった。

急患を助けるための措置だったのに…

PHSに入った連絡は呼吸器内科・腫瘍内科 医長である高野からの救急車の受入れ。

患者は85歳の高齢男性で心肺停止状態にあり、アパートの隣の家の玄関の前で倒れているところを発見されたそうだ。

高野は容体が急変した入院患者の処置のため、急患については誠一に「親族が到着するまで心臓マッサージを頑張りなさい」と指示。

救急隊が到着し、場を指揮する医師は何の経験もない自分1人。

心臓マッサージを続けてもなかなか脈が安定せず、誠一はパニックになりかけながらも必死に対応を考える。

既往の肺気腫のせいで血中の酸素濃度が上がらず、助けるには気管挿管しかない―。

「王の病室」1巻©講談社/灰吹ジジ・中西淳

初体験がこんな切羽詰まった状況になるとは
管理人

実習でしかやったことのない気管挿管を何とかぶっつけ本番で成功させ、胸をなで下ろす誠一。

精一杯の努力で患者を助けることに成功したが、この後誠一は高野から「余計なことをしてくれる」と叱られることになるのであった。

「王の病室」1巻©講談社/灰吹ジジ・中西淳

誰にも言えない医師の本音?その真意が気になります!
管理人

下手に延命するべきではなかったのか?

高野の指示はあくまでも「心臓マッサージ」だけ。

それはつまり、挿管せずに見殺しにするべきだったことを意味していた。

誠一をフォローする獄門院も高野の考えに共感を示す。

日本においては医療の価格は定価で決まっており、医師はスキルとサービスを提供しているに過ぎず、人助けではない。

また患者は助かったものの、一度付けた人工呼吸器を止めると殺人になるため、家族はそこから看護が必要な状態で生きながらえた患者の面倒を見続けなければならない。

誠一が考えも無しに突っ走った結果、家族にとっては突然果てしない治療と看護に巻き込まれることとなったのである。

「王の病室」1巻©講談社/灰吹ジジ・中西淳

「患者本人は助かりたかったはずだ」と本人の意思を主張する誠一だが、患者がそう思うのは当たり前。

どうしても納得できない誠一は、改めて医者としての在り方を考えさせられるのであった。

日本医療では患者全員が「王様」

誠一は助けたその患者・新島の面倒を最後まで見るため、主治医の高野の下で担当医として受け持つこととなった。

主治医のスタイルは医師によって様々であり、高野はアドバイスはするものの、勉強と実践を兼ねて誠一がほとんどの実務を任される。

そんななか、誠一は新島の家族に入院費用のことを聞かれ、返答に困ってしまう。

誠一は事務員から、日本では健康保険加入者であれば自費での負担額には上限があり、それを超えた分は公費で賄われる仕組みであることを教わり、家族にとっての負担が大きくなりすぎないことに安堵する。

だがここにも日本の医療の闇があるのだと高野は言う。

誰もが平等に医療を受けられる仕組みで、急性期病院の多くでは国家元首を相手にするのと遜色ない治療を提供している。

「王の病室」1巻©講談社/灰吹ジジ・中西淳

それはつまり、病院の患者全員が「王様」であり、その医療費を国民全員で負担していることと同義なのだった。

後医は名医

新島の血液検査の結果を確認する誠一だが、まだ研修1か月という経験の浅さから、内科医なら背筋が震えるような項目があるのを見逃してしまう。

そして新島の容体は悪化していき、CTなどの検査を踏まえて内科合同カンファレンスにかけられることとなった。

そこで誠一は自分が確認した検査結果分析の初動が間違っていたことを知る。

症状の見立てについて様々な医師からの意見が挙がるなか、獄門院は大穴狙いで免疫異常の一種である「グッドバスチャー症候群」の可能性を指摘。

さらなる精密検査の結果、新島は「グッドバスチャー症候群」であることが判り、誠一は獄門院がなぜ、いつからそう判断できたのか教えを乞う。

だがこれは「後医は名医」の典型的な例。

症状が悪化して前の医者よりもずっとヒントが多い状態でなら診断が当たる確率は当然高くなるというもの。

「王の病室」1巻©講談社/灰吹ジジ・中西淳

獄門院は、主治医が目をそむけたくなるような可能性を意識させるためにあえて「グッドバスチャー症候群」を示唆したことを教える。

それでも当たらなければまた次の手を打つ―。

医療は当たるまで続く泥仕合なのであった。

医師としての信念も人それぞれ

グッドバスチャー症候群が確定しステロイド投与による治療が始まったが、病勢はなかなか弱まらない。

誠一は高野に血漿交換を低減するが、その治療は1回でも20万円相当かかる高額なものであり、かつ効くまで何回も繰り返す必要のあるもの。

日本では未来を担う若者の教育に十分な投資がされていないにもかかわらず、老い先短い高齢患者に最高級の医療が提供されていることに高野は強い憤りを感じていたが、誠一の成長のための投資と思ってその治療にGOサインを出す。

だが血漿交換を5回繰り返しても新島は回復しない。

さすがに気がめいってきたところで、カンファレンスにも出ていた腎臓内科医員の松下に声をかけられる誠一。

話を聞いた松下は高野の考え方に一定の理解を示しつつも、「病はどんな人にも平等、そして病と闘う者にも同じくらい平等が許される」と教え、誰を助けるべきかを考えるより目の前の患者を治すのに集中する信念を語る。

医師にはそれぞれの信念があるが、一方で患者のためという信念を貫いた父は経営破綻という結末を迎えた。

自分の信念がどこにあるのか、思い悩む誠一は、新島の病室へお見舞いに来た孫が新島の快復を楽しみにしていることを支えにして根気よく治療を続け、入院から1か月後に新島は回復した。

これから長いリハビリが待っているが、それでも孫と共に楽しくゲームをする新島の姿を見て、頑張った甲斐があったと感じる。

だが他の高齢患者には家族に疎まれている人や身寄りのない人など、様々な人がいる。

そして患者を助けても助けなくても医師としての給料が変わらないシステムのなかで、果たして自分はどんな患者でも助けるために全力を尽くせるのか誠一の胸中はまだ揺れ続けているのだった。

医師の報酬はいくらが適正なのか?

担当する入院患者の容体がいつ急変しても駆けつけられるよう、病院の近くに家を借りる医師が多いが、その家賃の負担は研修医にとっては重いもの。

金欠を嘆く誠一に対し、獄門院は自分の年収が約1300万円であることを告げる。

若くしての高給に目を輝かせる誠一だが、獄門院は日本の仕組みとして夢の無い話を続けた。

バリバリ手術をこなす外科医であっても給料はさほど変わらず、管理職でない限りどの分野であっても医師の給料は同じような水準。

そして年齢を重ねても給料はほとんど伸びることはない。

高い給料を望むなら医師が不足している地方の方が良く、ドラマに出てくるような天才外科医であっても給料は同じ。

大学病院に至っては医局内の競争が激しい割りに給料の水準はさらに下がる始末。

腕のいい医者がいれば評判が高まるのではと考える誠一に対し、獄門院は「儲けのためだったら名医なんてクビ」という考えもあり得ることを教える。

それは、日本の診療報酬制度の下では全ての医療行為に定価が決まっており、どんなに最高の医療技術を提供したとしてもそれに見合う費用を取ることができないから。

病院経営は薄利多売に近い性質のものにならざるを得ず、厚労省の承認なしに売値が変えられないために利益を出すには患者数を増やすしかない。

経営だけを考えれば、難しい患者は門前払いし、手のかからない患者をリピートで通院させるのが望ましい。

「王の病室」1巻©講談社/灰吹ジジ・中西淳

評判めちゃくちゃ悪いのに全然潰れない病院の正体はこれだったのか…!
管理人

今の日本には名医であることを評価するシステムは存在せず、日本の医療水準が高いレベルで維持されているのは、真面目に勉強を続けて医師になった人々による責任感やドラマの影響によるヒロイズムなどによるものなのかもしれない。

健全な経済活動から考えれば、技術の程度に応じた報酬が支払われることで技術の水準が維持されるべきである。

だが獄門院はその一方で、医師も自分の適正な給料がいくらなのか分からないのだという。

例えば、自分が世界一の名医で、自分にしか治せない難病があるとしたら、その治療費としていくらを請求するのが適正なのか?

「王の病室」1巻©講談社/灰吹ジジ・中西淳

答えのない究極の問いですね
管理人

獄門院はそんな問いを投げかけ、誠一はその答えを探しながら励むことを決意するのだった。

【1巻のまとめ】

父の開業医としての苦労を見て金儲けができる医者になることを志し、研修医として病院で働く赤城。

しかし、厳しい研修生活の中で激務と薄給に直面し、さらに患者の対応で自己の限界を感じる。

高齢患者の救命措置を巡っては家族を果てのない看護生活に巻き込まないために無理に延命すべきでないという考え方があることを知り、自身の医者としての在り方について考える。

また、日本医療では医師はどんなに腕がよくとも給料がほとんど変わらず、患者全員にまるで王様のような治療をしなければならない。

医師としての給料が変わらないシステムのなかで、果たして自分はどんな患者でも助けるために全力を尽くせるのか。

その一方で、医師が自分の腕に応じて報酬がもらえるのなら、それはいったいいくらが適正なのか。

赤城は医師としての自分の信念を探すことになるのであった。

次巻へ続きます。

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