横須賀北高校に転校してきた森 文太郎は根暗で周囲を拒絶していたが、山岳部の宮本に絡まれたことをきっかけに命綱なしで校舎をよじ登り、それ以来登山にハマっていくこととなる。
顧問であり自身も日本有数のクライマーでもある大西先生は単独で命を投げ出すような危険な登り方をしたがる文太郎を気にかけ、登山の基礎や技術を教えながらインドアクライミングの大会に文太郎を出場させた。
そこで文太郎は初心者ながらも見事なクライミングを見せる。
しかし登るのに夢中になるあまり、コンペのルールでもある「カラピナに命綱となるロープを通す」という手順を無視したことで文太郎は失格に。
まるでソロクライマーのような振る舞いを見せた文太郎に会場や大西先生らが驚きを隠せない一方、窓の外にぶら下がりながら観戦していたある若者も文太郎に興味を持つのであった。
2巻のあらすじを振り返ってみましょう。
ソロクライマーとしての生き方
命綱となるロープを捨てたとき、まるで世界が自分と岩だけになったかのような感覚を持ち、ますますその世界に惹かれていく文太郎。
そこに文太郎に興味を持った原 渓人という若者が声をかけ、文太郎を屋上に連れ出す。
原の姿が自分のかつての親友にそっくりだったことに驚きながらも、別人だったことに少し安堵。
「一人で登り、一人で死ぬ」とソロクライマーとしての矜持を持つ原は自分と分かり合える存在として文太郎のことを見ていたが、まだ文太郎にはその覚悟もないことを見抜くと勝手に失望していった。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
だが原からソロクライマーとしての生き方を知ることとなる。
一方、クライミンググッズのショップの店長・吉田が文太郎に声をかけ、ソロクライマーの危険さを説く。
自身も登山家だった吉田は、40年前の登山ブームの際に会社の後輩・飯島と共に当時登攀不可能と言われた厳冬期の谷川岳の氷壁にチャレンジ。
その際に気温の上昇から起きた雪崩に巻き込まれ、2人はロープで繋がれていたために事なきを得たものの、吉田はピッケルを落としてそれ以上進むことができなくなってしまった。
だが飯島はそのチャンスへの未練を抑えることができず、吉田を置いて単独で登攀を続行し、霧の中に消えていく。
その3年後、飯島は深い谷底の万年雪で遺体となって見つかった。
発見された場所からして、飯島は登頂には失敗した模様。
吉田はその経験から「ロープは話すな。人との繋がりを絶てば人は生きてはいけない」と文太郎に説く。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
しかし文太郎は「でもその人、一人で登れたんだ」と飯島の気持ちに理解を示す。
その表情は、吉田が見た飯島の満足そうな表情を浮かべた死に顔によく似ているのであった。
クライミング部が正式発足
インドアクライミングの大会では、文太郎に強いライバル心を抱く宮本の番を迎える。
宮本は技術と執念でワールドクラスの難易度に設定された壁をも登り、大会唯一の完登者となって優勝し、全日本大会への進出を決めた。
だが宮本に笑顔は少なく、どうしても文太郎のことが気になる。
そして非常階段の裏でクライミングの練習を1人でしている文太郎を見つけると、文太郎をライバルとして認め、高め合うように文太郎にも技術を教え始めた。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
クライミング部の正式な許可も下り、体育館にウォールも作って部としての練習も始まるのであった。
文太郎の過去
大会を通じ、1人のクライマーとして文太郎の命を守ることに身をささげることを決意した大西先生は、文太郎がなぜここまでに孤独になりたがるのか、その過去を探る。
文太郎の前の学校の担任に接触した大西先生は、そこで文太郎がクラスメイトを自殺に追い込んだという衝撃の情報を得ることに。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
正確にはクラスメイトが自殺を図った現場にたまたま居合わせただけとのことだが、当時の状況について一切語らないことから、文太郎が殺人者のような扱いを受けてしまい居場所が無くなったのだという。
それでも文太郎のことを信じる大西先生は、文太郎がこれから真っ当に生きていけるように、クライミングを通じて指導することを決意するのであった。
宮本の夢とアルバイト
クライミング部を通じて少しずつ変わり始めた文太郎は、宮本が金稼ぎとトレーニングを兼ねてビルの窓ふきのアルバイトをしていることを知る。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
宮本の夢は世界一級の岩場であるフランスのセユーズでキャンプ生活しながら世界最難関のルートをオンサイトで完登すること。
その夢の大きさに触発された文太郎は、自分も引っ越しやでアルバイトしながら体力を鍛え始めるのだった。
双子山での実践、緊急事態に
クライミング部で双子山へ行くこととなり、大西先生は文太郎に登山の基礎を、そして宮本は幼馴染の夕実の面倒を見ながら距離を縮めるチャンスを得る。
しかしひょんなことから宮本と夕実が喧嘩すると、一人で下山しようとした夕実が滑落してしまう。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
宮本から連絡を受けた大西先生はすぐさま部員の福本と手分けして夕実の捜索を始める一方、文太郎は頭上にあるせり出した岩場に倒れている夕実を発見。
そして文太郎は命綱も無しに、夕実を助けるべくその岩場を1人で登り始める。
力尽きて落ちれば自分も命が危うい状況のなか、文太郎は岩の裂け目に腕を突っ込む「ハンドジャム」で腕の負担を軽減するなどして崖を登り切り、意識を取り戻した夕実のもとへ到着。
そのまま文太郎は夕実を背負ってさらに崖を登り、無事に助けた。
文太郎が登ったのはオーバーハングしかない崖であり、オンサイトかつフリーソロで完登した文太郎の才能に大西先生や宮本らは驚きを隠せない。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
当の文太郎も、クライミングの気持ちよさを知りますますハマっていく。
しかしその一部始終を偶然山にいたフリージャーナリストの黒沢が週刊誌で文太郎の危険な挑戦をスクープとして報じ、炎上することになってしまうのだった。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
炎上、そして悪徳記者に唆され…
人命救助のためとはいえ、危険な行いをさせたとしてクライミング部は無期限の活動停止に。
責任を感じた文太郎は再び距離を置いて、自ら孤独になっていく。
そんな文太郎の活躍をさらなるスクープとして売りたい黒沢が接触し、「雪山は下界の汚いこと、やな事全部真っ白に洗い流してくれる」などと唆しながら八ヶ岳の主峰・赤岳のアイスクライミングを勧める。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
黒沢は雪山など登ったこともない初心者だが、文太郎はそのことを知る由もない。
ネットでもある事ない事が書かれてクライミング部が炎上し、宮本がフラストレーションを爆発させるなか、文太郎の頭から黒沢の言葉が離れないのであった。
「孤高の人」2巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
【2巻のまとめ】
誰にも命を預けず、1人でソロクライマーとしての生き方を知った文太郎。
以前いた高校ではクラスメイトの自殺現場に居合わせたことから殻にこもるようになったという過去も明かされる一方、正式に発足したクライミング部の活動を通じて徐々に人としても変わり始める。
ところが双子山での活動時に夕実が滑落してしまい、文太郎は夕実を助けたものの、命綱なしで難易度の高い崖をよじ登り、その一部始終をフリーライターの黒沢によって暴露されてしまう。
クライミング部は世間から叩かれて炎上し無期限の活動休止。
一方、文太郎の活躍をさらなるスクープとして売りたい黒沢は文太郎に「雪山は下界の汚いこと、やな事全部真っ白に洗い流してくれる」などと唆しながら八ヶ岳の主峰・赤岳のアイスクライミングを勧める。
活動休止について責任を感じる文太郎の頭から、黒沢の言葉が離れないのであった。
次巻へ続きます。
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