15歳の少年セスタスはヴァレンス剣闘士養成所に所属する拳奴であり、「100勝すれば自由の身」という条件で過酷な戦いの道を歩み出した。
元拳奴のザファルに師事し、師の仇敵であるデミトリアスやその息子ルスカとの出会い、そして弱い17歳にしてローマ皇帝に即位したネロとその母アグリッピーナと、セスタスの周囲で物語が動き始める。
デミトリアスが先帝クラウディウス一派による皇帝暗殺計画を阻止したが、命を狙われたことにショックを受けるネロは、母アグリッピーナが先帝クラウディウスを謀殺したのではないかと疑心暗鬼になり、孤独に恐怖するようになる。
信頼できる味方としてセスタスを自分専属の奴隷にしようとするが、師や共に育った仲間たちのためにセスタスは皇帝のお願いを固辞した。
そんなある日、セスタスの所属するヴァレンス奴隷闘士養成所では虐げられてきた拳奴たちの不満が爆発し、ヴァレンスの娘でありルスカの婚約者でもあるヴァレリアを人質にとって奴隷の反乱が勃発した。
セスタスやザファルなど反乱に加担しなかった者を除いて奴隷たちは全員殺される一方、ヴァレリアもまた自暴自棄になった奴隷によって殺されてしまう。
婚約者を殺され錯乱するルスカは拳奴への憎しみを募らせ、セスタスとの間に芽生え始めていた友情も崩壊。
奴隷拳闘士養成所は解体され、新たな身請け先のドリスコ拳闘団でザファルや同年代のペドロ・エルナンド・ゲティや看板闘士のラドックらと共に巡業で帝都ローマを離れることとなった。
他方、衛帝隊内で腕を上げるルスカだが、絶対的な父デミトリアスの呪縛から逃れられずにいた。
そうとは知らない皇后オクタヴィアがルスカに惹かれ始めるのに対し、妾の奴隷アクテと逢瀬を重ねるネロはアグリッピーナの支配から自立するため、オクタヴィアとの離縁をも宣言し、帝都ローマに不穏な空気が立ち込めていく。
その頃、ザファルのもとで訓練を積みつつ、天性のバネと不屈の闘志を持つ黒人奴隷ゾラを新たに拳奴として迎え、セスタスたちは訪れた都市ポンペイで絶世の美女だが天邪鬼のサビーナと、サビーナから寵愛を受けることを夢見てひたむきに戦い続ける拳奴エムデンと出会った。
「拳闘大会で前人未到の50連勝を達成したら家臣に迎えてあげてもいい」というサビーナの言葉を生きがいに48連勝まで積み上げたエムデンだが、サビーナは武骨なエムデンを毛嫌いしている様子。
逆にサビーナは気品や若さを兼ね備えるセスタスを侍従に加えたいと申し出、突然の提案にセスタスは困惑することとなるのだった。
12巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
目次
セスタスの固辞がエムデンの怒りと嫉妬を煽る
サビーナからの誘いに対し、セスタスはザファルや仲間たちとの絆、そして自分の力で自由を勝ち取りたいという強い覚悟を口にして固辞を申し出る。
自分の好意を無下にされ気分を害したサビーナは、自らエムデンを呼びつけ、「拳闘試合を観てあげるから私の目の前でセスタスを全力で打ち負かしなさい」と命じる。
憧れのサビーナからの命令、サビーナから自分より先に誘われたセスタスに対する嫉妬、そしてセスタスがその誘いを断ったことに対する怒り―。
エムデンには一層の気合が入るのだった。
セスタスvsエムデン
気合十分の中、セスタスとエムデンの試合が始まる。
スピードで上回るセスタスは全速で連打を仕掛け、エムデンの鉄壁の守備を破って先にダウンを奪った。
しかしダメージは浅く、逆に飛びしすぎたセスタスの息があがってしまう。
どっしりと構えたエムデンは低姿勢から距離を詰めるようにして接近戦を仕掛け、裏拳や心臓打ち、鉄槌横殴りなど多彩な打撃であっという間にセスタスからダウンを奪い返した。
決してダメージの軽くないセスタスは果敢に反撃に出るが、それはエムデンの仕掛けた罠。
ボディを狙って下に潜り込んだセスタスの上から鉄槌を振り下ろす必殺技「断頭」を繰り出し、セスタスは強烈な一撃で昏倒してしまった。(※11巻の冒頭に繋がる)
なんとか柔軟な身体で打撃の衝撃を分散したことで昏倒から早く回復で来たセスタスは、トドメを刺しに来るエムデンに自ら飛び込む。
幸いにも、断頭を食らう前に放ったボディがエムデンの左わき腹に大きなダメージを与えており、アバラを攻めればまだ逆転の希望は残されていることが判明するのだった。
サビーナ・エムデン・ナシカの過去
小さな身体で戦い続けるセスタスに目を奪われるナシカは、幼少期のことを思い返していた。
16年前、孤児たちが集められポッパエウス家の奴隷として1人が選別されることとなったときのこと。
幼い美少女だったサビーナは孤児たちを勇気づけようと「選ぶなら働き者で一番強い男の子に一緒に来てもらおうかな」と声をかける。
無邪気な少女の言葉は飢えた孤児たちの目の色を変えさせ、そこから孤児たちの間で凄惨な殴り合いが始まった。
サビーナが自分の言葉が多大な影響力を持つことを自覚する契機となった出来事であり、その殴り合いではナシカとエムデンが最後まで生き残る。
ナシカはエムデンの頭突きによって鼻骨が曲がり、勝利を収めたエムデンはそれ以来ポッパエウス家の奴隷として闘争の道を歩き始めた。
一方のナシカはファブリウス家に拾われ、その才能を見出されて現在に至る。
ナシカにとって、自分にはない勇気と忍耐を持って戦うセスタスの姿は純粋な憧れの対象として映っていたのだった。
師匠直伝の殺し技「断頭」で奇跡の逆転勝利を飾る
観客たちも次第にセスタスの戦いぶりに魂を揺さぶられ、奇跡を期待する声が高まっていく。
集中力を研ぎ澄まし、エムデンの攻撃を凌ぎながら攻めるセスタス。
的確にアバラを狙われたエムデンにも余力は少ないが、セスタスも左のまぶたを切ってしまい、滴る血が左目の視界を奪っていく。
残された時間と体力は僅か。
腹を決めたセスタスは全力で仕掛け、エムデンの攻撃をかわしながら背後へと素早く回り込む。
そこから放ったのはザファルから伝授された殺し技「断頭」。
全体重を乗せた拳がエムデンの延髄に命中し、付け焼刃ながらも一撃でエムデンを昏倒させた。
奇しくもエムデンの必殺技と同じ延髄を狙う、同じ名前の技でセスタスが奇跡的な逆転勝利を挙げたのだった。
サビーナから別れを告げられるエムデン
敗北に怒る観衆はエムデンの処刑を求めて声をあげるが、エムデンの強さに尊敬の念を抱いていたセスタスは自ら親指を突き立て、気高く無言の抗議を貫く。
賛否別れるこの行動は観客同士の激しい言い争いを巻き起こし場内は騒然とする事態に。
するとサビーナは自らの姿を観客たちの前に晒し、全員の注目を集めながら絶妙な対処で場を収めてみせた。
そして負けたエムデンには笑顔で「お疲れ様。お別れね」と言葉をかける。
エムデンにとっては初めて笑顔と労いの言葉をかけられたのが敗北で夢破れたときという、辛い結果になるのだった。
【12巻のまとめ】
サビーナの申し出を固辞したことで嫉妬と怒りを煽られたエムデンが拳闘試合でセスタスと対峙することとなる。
強固な防御と相手を死に至らしめたこともある殺し技「断頭」でセスタスを追い詰めるエムデンだが、セスタスも数少ない勝機を逃さずザファル直伝の殺し技「断頭」を放つ。
奇しくも同じ名前の技によってセスタスが奇跡的な逆転勝利を挙げ、会場を沸かせた。
試合後、サビーナから労いの言葉と別れを告げられるエムデンは、最も欲しかった言葉をかけられたのが夢破れたときという辛い結果になるのだった。
次巻へ続きます。
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