リカオンズ悲願の優勝を目指す”悲運の天才打者”児島は、ミニキャンプに来た沖縄で1打席勝負の賭け野球「ワンナウト」で無敗を誇る天才勝負師・渡久地東亜と出会う。
速球も変化球もないが並外れた度胸、洞察力と読心術で相手打者を翻弄する渡久地を児島は勝負への執念で破り、渡久地は児島に従って「リカオンズを優勝させる」という目的のもと入団することとなった。
球団経営を銭勘定でしか考えないリカオンズオーナーの彩川と「1アウトで+500万円、1失点でー5000万円」という完全出来高制の年俸契約(通称:ワンナウツ契約)を結び、渡久地のプロ野球選手としてのシーズンが始まる。
既に球団売却を水面下で進める彩川オーナーはワンナウツ契約に具体的な条件をつけ有利に進めようとするが、渡久地は相手打者や彩川オーナーを手玉に取り荒稼ぎをしていく。
渡久地はパ・リーグの最強王者マリナーズとの3連戦に全試合先発させられながらも見事に大幅な収支黒字で切り抜け、ホームスチール成功率100%の最速男ジョンソン擁するバガブーズも叩き潰した。
次の相手はホームスタジアムでイカサマを駆使する悪質球団ブルーマーズ。
球団ごと不正をしていると確信した渡久地は、相手の守護神ウィリアムスが偏芯ボールを利用したインチキナックルを投げていることを見抜く。
初戦を落としたリカオンズだが、第2戦ではサインが全て盗まれていることを確信し、そのトリックを見破るために通常ではありえないサインを出して反応をうかがうのだった。
8巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
サイン盗みを逆手に取る
バントする素振りを見せた児島を見て、ブルーマーズの選手たちは虚を突かれる。
渡久地が監督を通じてブルーマーズを揺さぶり、出口がブルーマーズの選手たちに発せられているであろうサインを探る。
〈揺さぶりをかける渡久地 [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
そして何球か様子を見たのち、再び児島にスクイズのサインが―。
しかし児島は甘く入ってきた直球をサインを無視してフルスイングし、2点差に迫る値千金のスリーランを放つ。
〈スクイズのはずがフルスイング [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
スクイズで揺さぶったことで確実にブルーマーズ内にサインを行き渡らせ、スクイズと見せかけてフルスイングするよう、予め渡久地と児島は打ち合わせていたのである。
敵のトリックを明かし、反撃開始
ひとまず追い上げることに成功はしたが、それでもブルーマーズのサイン盗みのトリックを解き明かしたわけではない。
野手たちが一斉にどこかを見たりする素振りはなく、捕手が全体に何かを発信しているようでもない。
渡久地は続く打者にセーフティバントを指示してさらに揺さぶり、敵の間でサインを行き渡らせている方法を特定した。
その正体は、相手の応援団の太鼓。
〈太鼓でサインを発している [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
常時演奏しているなかで必要時にリズムを変えることで、ブルーマーズはサインを選手たちへ発信していた。
ここまでわかれば、あとは利用してうまくハメるだけ―。
リカオンズの攻撃はあと8回と9回のみ、ここから渡久地の反撃が始まる。
〈いざ反撃開始 [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
三原監督を丸め込み実権を握る渡久地
8回のリカオンズの攻撃は出口から。
渡久地はまた三原監督を操ってセーフティバントのサインを出させようとするが、オーナーとの賭けのためにどうしても勝ちたい三原は危ない橋を渡ろうとしない。
そんな三原監督を渡久地はベンチ裏に呼び出し、ある提案を出した。
・自分の指示にすべて従えば5千万を三原に与える
・ただし、今日・明日2連勝を飾ればそのうち4千万は渡久地に返す
・今日・明日のどちらかでも負ければ5千万はすべて三原のもの
〈三原監督を買収 [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
三原は勝っても負けても得をするこの提案に飛びつき、絶対に2連勝する自信のある渡久地にとってはわずか1千万で三原を自分のイヌにすることに成功するのだった。
サインを盗んでいる相手を混乱に陥れる
作戦通り、セーフティバントにみせかけたバスターで出口が出塁。
ノーアウト1塁、両チームともサインが飛び交う場面で、三原は送りバントのサインを出す。
当然、このサインはブルーマーズに盗まれているが、出口は渡久地を信じてそのサイン通りに行動、アウトにならないために盗塁ばりの全速力でスタートを切る。
〈渡久地を信じて考える出口 [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
バント対策で内野陣が前進してくるなか、打者は逆手に取ったようにしてヒッティング。
見事なバスターエンドランの形となり、打球は内野を抜けて出口は3塁を陥れた。
ブルーマーズ守備陣も、三原と出口でさえも何が起きているのかわかっておらず唖然としているが、渡久地はまだまだ手を緩めない。
出口に出たサインは「初級ホームスチール」。
〈初球ホームスチール!? [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
無謀すぎる出口は必死に思考を巡らせ、「アウトになるわけにはいかないが、あからさまなサイン無視もカドがたつのでスタートだけ切るフリをする」という行動に出る。
するとこの隙に1塁ランナーが2塁に猛然とダッシュして盗塁を試み、慌てたブルーマーズ守備陣が連係ミスを犯したところで出口がまんまとホームインを果たした。
渡久地が仕掛けたのは監督と選手のサインのパターンをズラすという単純なもの。
〈サインをズラした渡久地 [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
三原や出口にも秘密にしたことで不自然な挙動は見られず、ブルーマーズにとっては「急にリカオンズのサインが変わった」というようにしか映らない。
混乱に陥るブルーマーズのスキを突くように後続がヒットを放ち、勢いに乗ったリカオンズは7-5と試合をひっくり返すのだった。
〈逆転に成功 [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
勝負の第3戦へ
マウンドには渡久地が立ち、9回裏ブルーマーズの攻撃。
ツーアウト1塁で打席にはロドリゴ。
〈ロドリゴも渡久地には手も足も出ない [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
渡久地は掌の上で転がすようにしてロドリゴから三振を奪い、第2戦を勝利で締めくくる。
ワンナウツ契約でますます渡久地の年俸は上がるが、彩川オーナーはなぜか余裕の表情。
ワンナウツ契約の条文にある必勝策を見出し、一気に渡久地の年俸をチャラにする腹積もりのようだ。
〈彩川オーナーはなぜか余裕の表情 [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
不穏な空気を孕んだまま、ブルーマーズとの第3戦を迎えるのだった。
阻止できないサイン盗み
サインを盗まれにくくするため、リカオンズは「打席に立つ選手の背番号」をキーにしてサインのパターンを変える作戦を立てる。
かなり不規則で一見では盗まれづらいパターン、しかし今日のブルーマーズは一味違った。
全てを見透かしたかのようにリカオンズを打ち崩し、4回裏にはロドリゴが投手の球種を狙いすまして先制の2点タイムリーツーベース。
この状況に渡久地はブルーマーズがまた新たなイカサマをしていることを確信するのだった。
〈サイン盗みのトリックは一体…? [ONE OUTS 8巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
【8巻のまとめ】
敵がこちらのサインを盗んでいることを逆手に取り、意図的にコミュニケーションミスを引き起こすことで予期せぬサイン無視を演出した渡久地。
ブルーマーズを混乱に陥れて逆転に成功し、第2戦を勝利で飾る。
そして盗まれにくいサインのパターンを立てて臨んだ第3戦。
しかしブルーマーズはなりふり構わぬイカサマでリカオンズのサインを盗んでいるのだった。
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