神話やおとぎ話のモチーフとなり、かつて怪物や妖怪などと称され迫害されていた、「亜人」と呼ばれる特別な性質を持つ人間たちがいる世界。
現在では、亜人たちは世間に「個性」として認められて一般社会に自然に溶け込み、社会的な弱者である亜人に対する「生活保障」が整備され、差別意識も希薄となり、若者たちには亜人のことを「デミ」と可愛く呼称するまでになっていた。
新学期、大学時代から亜人に興味をもっていた高校の生物教師の高橋鉄男は、これまで一度も亜人に出会ったことがなかったが、おしゃべり好きでお調子者な「ヴァンパイア」の小鳥遊ひかり、頭と胴体が分離している「デュラハン」の町京子、暑さに弱い「雪女」の日下部雪といった1年生の生徒たちや、地味な服装にして異性を避けている「サキュバス」の新人教師佐藤早紀絵と、それぞれ「亜人としての悩み」を抱える彼女たちに囲まれながらの生活が始まった。
当初はただの興味の対象としか見なさなかった鉄男は、次第に教師として同僚として、彼女たちの話を聞きながら問題に向かい合っていく。
また鉄男の姪の陽子の家には、陽子にしか認識できない座敷童子のざしこが住み着き、まるで親と子のように面倒を見ることになり、他の人には認識できないざしこについて物理学の観点から考察を重ねると、むしろざしことコミュニケーションを取れる陽子も亜人と言う結論に至る。
またデュラハンの見えない首について、親友で物理学を専攻している相馬にも相談しながら考察を重ねていく鉄男は、その謎が解ければ京子を普通の人間に戻すことができるかもしれないことを知った。
亜人たちは自分達に真摯に向き合おうとする鉄男のことを信頼し、京子や佐藤先生たちは次第に恋愛感情を持つように。
そんなある日、相手のオーラから心を読むことができるキジムナーの亜人、比嘉 薫が短期留学生として仲間に加わり、京子の恋心を見抜いた薫はその背中を押す。
決意を固めた京子は鉄男に告白するが、突然のことに驚いた鉄男は聞こえないフリをしてその場をスルー。
後に佐藤先生から「若さゆえの恋心でも向き合ってあげてほしい」とアドバイスを受けた鉄男は、それを指摘してくれた佐藤先生に自分が好意を抱いていることを自覚するように。
そして京子の想いに真っすぐに向き合うことにした鉄男は、京子をなるべく傷つけないようにフッた。
失恋を糧にひとつ成長した京子、自宅にひかりと雪を招いての花火鑑賞会で絆をさらに深めるのであった。
9巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
それぞれが青春を謳歌し、秋を迎える
夏休みに入り、鉄男は佐藤先生と映画デートへ。
順調に距離を縮めるなどそれぞれが青春を謳歌しつつ、薫も短期留学を終えて沖縄へと帰郷。
そして夏休みが終わり、秋を迎えるのだった。
ひかりとひまりの約束
新学期が始まり、ひかりはどこか元気がない様子。
自分の部屋にいつも備蓄している血液パックに手を付けぬまま、普段通りの生活を送るようにしているようだが、ある日我慢の限界を迎え、自宅でひまりを押し倒してしまう。
ひまりは姉の吸血を受け入れる姿勢で、姉妹の約束通りに自分のチョーカーを取るように伝えると、我に返ったひかりは自室に逃げ込んで血液パックを吸い始めた。
ひかりはテレビに出ているような「血を飲まないで生きられるバンパイア」のように自分も生まれ変わろうと頑張っていたが、大失敗。
ひまりはそんなひかりの努力を認めつつ、「ひかりはバンパイアの性質が薄くなく、国も認めているから血をくれている。堂々としていればいい」と言葉をかけた。
双子であるのに人間とバンパイアとして生まれてきたひかりとひまり。
バンパイアが血を欲するようになるのは4~5歳くらいらしく、初めは両親は必要ないだろうと国から交付される血液を申請しなかった。
そしてひかりも当時はバンパイアとしての性質は薄かったが、油断していたある日、幼稚園でひかりがひまりの首を噛んでしまう事件が発生。
それを見ていた幼稚園の先生が両親に説教するが、ひまりは姉を庇って「どうしても我慢できなくなったらまた私から血を吸うと約束した」と宣言する。
バンパイアだった姉のことを「普通の人とは違う」などと言葉で傷つけた先生に食ってかかり、それ以来、噛まれた傷を隠すためのチョーカーは姉妹の約束を象徴するものになったのであった。
「人と違う」という言葉
「人と違う」ということについてモヤモヤを抱えていたひかりは、朝早くに登校して鉄男に相談してみることに。
宿直明けの佐藤先生と先に出会い、鉄男は「亜人」という言葉が適切かどうか考えていたことや、ひかりが「デミ」という呼び方を紹介したことについて若者だからできるポジティブな発想だと感心していたことを知るひかり。
そもそも鉄男はなぜ亜人に興味を持ち、こんなにも寄り添ってくれるのか―。
学校に姿を現した鉄男にさっそくアタックし、「なんで亜人が大好きなの」と質問。
すると鉄男は「自分とは違うからかな…」と返し、同じ理由でも好きな理由にも嫌いな理由にもなることに気付いたひかりは、元気を取り戻すのであった。
他者への思いやりに優れるひかり
雪や京子のように、自分にはしっかりとした夢ややりたいことがないことに悩んでいることを鉄男に相談するひかり。
鉄男は教師として、今は焦る必要もなく、特に他人への思いやりに優れるひかりについては全く心配していないことを告げる。
高校の3年間の間にどこに出しても恥ずかしくないように教え育てるのが自分の仕事と考える鉄男にとっては、最後は自分のことを頼ってこなくなることが目指すべき姿。
鉄男は雪や京子が最近相談に来なくなったのも寂しくはあるが喜ばしいことと考えていたが、ひかりはそんなのは寂しすぎると号泣。
ひかりは深くは考えておらずともずっと鉄男のもとに通い、鉄男のネガティブな感情をも和らげてくれるのであった。
【9巻のまとめ】
それぞれが青春を謳歌し、季節は秋に。
自分なりに考えて行動するようになったひかりは精神的な成長を見せ、鉄男もそんなひかりが他人への思いやりに優れることを認めて見守り続けるのであった。
次巻へ続きます。
この漫画をもう一度読みたい方はこちら
全巻まとめに戻る
-
-
参考亜人の性質を科学的に考察?高校生活の日常で織りなされる青春コメディ『亜人ちゃんは語りたい』全11巻【ネタバレ注意】
続きを見る