プロ野球のスパイダースに所属していた凡田夏之介は、プロ8年目で年俸1800万円の中継ぎ投手で、プロ野球選手としては決して一流とは言えない選手である。
このままでは引退後は年収100万円台の生活に陥ってしまう。
「グラウンドには銭が埋まっている」略して「グラゼニ」を胸に、同郷の先輩で引退しラジオでの解説者に転身を果たした徳永、同期で先発投手の渋谷、後輩で期待の若手野手である大野らと共にプロ野球選手としての生活に励んでいる。
中継ぎの便利屋として登板機会が増える凡田だったが、急きょ先発に抜擢される。
先発投手への転向と言う憧れを抱いていた凡田は気合十分だったが、不運にもクロスプレーで骨折し、戦線離脱することに。
根気よくリハビリをして1軍に復帰した頃には4か月が過ぎており、チームは優勝争いの真っただ中。
2軍で苦楽を共にした樹と共に1軍に昇格した凡田は、ブランクがあったものの目覚ましい活躍を見せ、樹と共にチームのリーグ優勝に貢献した。
シーズンオフには解雇やトレード、トライアウトを経ての海外移籍などで出ていく仲間を見送る凡田。
そんななか、ファン感謝デーで秘かに思いを寄せている行きつけの定食屋の店員・ユキと遭遇するも、自分の将来が安泰ではないこと自覚しアプローチをかけられずにいる。
契約更改でアピールに成功し、希望通り年俸がアップした凡田は、春のキャンプでは昨年で引退し今年から解説者になった大物捕手の北王子が視察に訪れ、凡田のことを目にかけるように。
球界の裏話では北王子は来年からワイルドワンズの監督に就任することが既定路線であり、その新体制で凡田の引き抜きを狙っているのか、北王子は凡田の実力を高く評価し、先発への転向を勧めてくるのであった。
新シーズンが開幕し、ローテーション6番手の先発として起用されることとなった凡田は、まずまずの結果を残すものの勝ち星に見放される日々が続く。
登板間隔の長さももどかしく感じられ、全く運に恵まれず乱調に陥ったことで2軍落ちを経験。
再調整の後に1軍復帰後の先発に臨む凡田だが、レギュラー捕手の寺杉の負傷により急遽2軍捕手だった丸金とバッテリーを組むことに。
丸金は凡田以上のグラゼニ体質であり、打撃が絶好調で覚醒したものの、不思議とチームは負けが込んでしまい、相変わらず勝ち星に恵まれない状況が続く。
ピッチングは悪くないのに0勝5敗と成績が伴わないなか、意中のユキに自分がプロ野球選手であることが伝わってしまった凡田は、最悪のタイミングでの出会いに複雑な胸中となる。
他方、北王子も球団フロント人事の一新により既定路線だった来季のワイルドワンズ監督への道が白紙となり、そこに目をつけたスパイダースの親会社の社長が次期監督としてリストアップするのであった。
9巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
目次
完封するも運に見放された凡田
9回を完封しながらもまた勝ち星がつかなかった凡田。
ようやく先発としてのコツを掴みかけていたが、田辺監督は凡田を先発ローテーションから外す決断を下す。
そもそもチームが勝ちきれないのはスランプに陥った丸金を頑なに交代させずにチャンスを潰してしまったから。
辛抱強く丸金を使ったがために凡田への援護ができなかったのである。
それでも田辺監督は凡田を2軍に落とし、中継ぎとしてリスタートさせることを決定。
すぐに1軍に戻れるとはいえ、チームに振り回された挙げ句の中継ぎ再転向に凡田は気を落とすのであった。
2軍にユキが訪れるが…
2軍で樹と再会した凡田。
2軍ではイースタンの試合に出るだけでも激しい争いがあり、試合にすら出られない選手がたくさんいる。
樹もなかなかチャンスが与えられない1人であったが、妻と子供のために頑張る姿を見て、凡田も無性に家庭を持ちたいという気持ちが沸き上がった。
するとちょうどそこにキッチン味平の女将とユキが2軍のグラウンドを見学に訪れる。
お節介好きな女将は、今は2軍とはいえ一般人と比べれば高収入の凡田とユキをくっつけようとしていた。
ユキと女将が観戦するなか、イースタンの試合が始まる。
代打で出場した樹は満塁ホームランを放ってアピールに成功するが、すっかり調子を落としている凡田は大量失点。
心と体のバランスを崩したどん底状態で、1軍に復帰する頃にはシーズン終盤の10月になってしまうのであった。
シーズン終盤に1軍復帰
シーズン終盤の10月、スパイダースは3位でのクライマックスシリーズ進出をかけて激しいデッドヒートを繰り広げ、ベンチはピリピリしていた。
辛抱強く使われた丸金は打率3割超え、ホームラン25本、打点99とブレイク。
そこに9月から1軍に昇格した樹も打ちまくり、チームに貢献する。
凡田はシーズン残り5試合のところで1軍に戻るものの、サバイバルのような状況で登板機会は与えられず、凡田自身も来季の年俸ダウンを覚悟していた。
しかし最終戦、勝てば3位、負けか引き分けなら4位というモップスとの重要な試合でマウンドを託されることになるのであった。
最終戦での活躍でCS進出に貢献
この試合、樹が先制となる満塁ホームランを放ち、先発の新外国人スコットも好調。
しかし8回に乱調となり、ノーアウト満塁でリリーフ陣が次々と打たれてしまう。
あれよあれよと同点に追い付かれ、さらにノーアウト満塁のまま。
逆転を許せば一気に敗色濃厚という大ピンチで、出す投手がいなくなったために凡田がマウンドに上がることとなった。
1点もやりたくないという窮地で久々のマウンドに立った凡田は、肩が軽く絶好調の投球で3者連続三振を奪い、13球でピンチを脱する。
そしてその裏には丸金が100打点目となるソロホームランで勝ち越しに成功し、チームは逃げ切って3位が確定。
最終戦で初勝利を飾った凡田は、人生初のお立ち台にも登るのであった。
CS1stステージでも完璧なリリーフで流れを呼び込む
窮地を救った凡田の13球は新聞でも大々的に報じられ、クライマックスシリーズが始まる。
相手はカーナビーツ。
スパイダースのエース椎名と、スタンドの大歓声を背負う原武が先発するが、椎名が初回から2失点し、さらにワンアウト満塁のピンチを招いた。
田辺監督は早々に椎名を諦め、ここで凡田を投入。
凡田は初球から裏をかいたチェンジアップで併殺に打ち取り、1球でこのピンチを切り抜ける。
試合の流れをガラリと変え、田辺監督は自分の直感に従って凡田はここぞというときのみで使うことにし、この試合では次の回のマウンドには送らないことを決意。
そうとは知らない原武は凡田との投げ合いを意識するあまり、バッターに集中できず同点に追い付かれた。
その後、細かい継投と代打で攻めるスパイダースは1点勝ち越し、一方の原武は1人で粘りのピッチングを見せる。
しかし結果はそのままスパイダースが逃げ切り勝利。
翌日のスポーツ紙には凡田の1球が紙面を飾り、その後も凡田の大活躍でチームはクライマックスシリーズのファイナルステージへと進出するのであった。
CSのMVPとなり一躍時の人に
就職に失敗し、親への反抗と見返したいという思いから大学卒業後に調理師専門学校に入ったユキは、そこで料理の才能に目覚め、キッチン味平のメニューを考え出すまでに至っていた。
そんななか、キッチン味平にこっそり通っていた凡田と出会い、女将のお節介もあって凡田を意識し始めるユキ。
出会いは2軍だったものの、クライマックスシリーズでは凡田が大車輪の活躍を見せ、中継ぎ投手でありながら凡田がMVPに。
凡田は一躍時の人となるのであった。
【9巻のまとめ】
チームに振り回されるまま中継ぎに再転向を命じられ、心と体のバランスを崩した凡田がようやく1軍に復帰できたのは、10月のシーズン終盤だった。
CS進出がかかった激しい争いのなか、凡田は目覚ましい活躍を見せてチームをCSへ導き、さらに中継ぎ投手でありながらCSでもMVPに選出される。
凡田はユキに認識された頃にはどん底であったものの、今や時の人となるのであった。
次巻へ続きます。
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