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前巻はこちら北海道での再会と、動き出す四角関係の行方『凪のお暇』11巻【ネタバレ注意】
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『凪のお暇』12巻は、凪・夕・慎二・ゴン・市川、すべての登場人物がそれぞれの答えにたどり着く、感動的な完結巻です。
笑いあり、涙あり、そして静かな希望に満ちたラストは、長く読み続けてきた読者の胸に深く響くものがあります。
「自分らしく生きる」というこの作品のテーマが、最後の最後まで丁寧に描かれた一冊です。
それでは、12巻の見どころを詳しくご紹介します。
目次
市川の断りと、慎二への気づき
ゴンに凪と慎二の邪魔をしないかと持ちかけられた市川は、きっぱりと断ります。
はっきり断られたことでゴンは安堵します。
一方凪は慎二が自分を好きなのではないかと意識し始めてから、慎二がかわいく見えてきたと自覚します。
ひどいことをされたのに好きなら仕方ないと許してしまう自分に自己嫌悪しながらも、その感情と正直に向き合おうとする凪の姿は、これまでの成長を感じさせます。
東京では武からメッセージが届き、夕も浮かれながら返信していました。
武と二人で会う約束をした夕は、過去の落とし前をつけるために向かう電車の中で覚悟を決めます。
化粧品のテスターで顔を整え、昔使っていた色に近い口紅を購入して再会の場へ向かう夕の姿は、長年抱えてきた感情の重さをさりげなく伝えてくれます。
夕と武の再会、28年越しの答え
再会した武は変わらない姿で待っていました。
内心喜びながらも落ち着くために冷たく接する夕。
喫茶店で話す中で互いに変わっていないと感じた夕は、会えなかった28年間がなかったかのような錯覚に陥ります。
武は病床で意識が朦朧とする中で過去の選択への後悔が浮かび、夕をSNSで探して連絡したと話します。
かつての言葉が夕を傷つけていたことを謝る武に対し、夕も自分のことしか考えていなかったと謝ります。
しかし武が入院の原因が不摂生によるものだったと知り、夕は現実に引き戻されます。
いつか成功してから迎えに来ようと思いながら一人で歌い続けてきたと話す武が喫茶店でライブを披露しますが、昔と変わらない粗削りな歌にそのノリについていけないと感じる夕。
ギターのピックでパチンコのハンドルを抑えていることへの違和感をきっかけに、武を自分の都合のいい解釈でイメージしていただけだったと夕は気づきます。
28年間胸の中で生き続けてきた武の像が、現実と向き合う中でゆっくりと崩れていくこの場面は、読んでいて胸が締め付けられます。
夕の決別と、前を向く決意
悲しんだ夕はトイレに逃げ込み、口紅でトイレの壁に落書きをして喫茶店を後にします。
雨の中アパートへ帰った夕は、うららの母に武とのことを打ち明けます。
武の選択肢の中に凪がいる世界線はなかったけれど、夕の中にはどんな時でも凪がいたという言葉は、この作品の中でも特に印象的な一節です。
凪の存在を選択肢に入れなかった武を許せないと話す夕は夢ノートを破き、雨に濡れた靴を乾かしながら北海道に戻る決意をします。
地元の閉鎖的で陰湿な空気は実は自分自身だったと気づいた夕は、見くびることをやめてこれからは変わっていくと前向きになります。
うららの母と友情の証を交わし、夕は夢を終わらせます。
7巻から続いてきた夕の物語が、ここで一つの区切りを迎えます。
嫌いだと思い続けてきた母が、実は同じように傷を抱えて生きてきた一人の人間だったと凪が気づいていった流れが、この場面で美しく結実します。
凪の誤解と風邪、ゴンへの思い
凪は慎二が自分を好きかどうか、みんなの前で直接問いかけます。
しかし30分後に慎二がやっと絞り出した答えははぐらかすような言葉でした。
自分には彼女がいると話す慎二に、凪は唐揚げの練習が市川のためだったのかと思い当たり、逃げ出します。
しかし風邪をひいていた凪は熱を出してしまいます。
熱にうなされながら慎二への誤解でみんなに迷惑をかけていることを恥ずかしいと思う凪でしたが、周りが通常通りに接してくれることを救いに感じます。
今向けてもらっているゴンの誠実な行為を大切に生きようと思う凪でしたが、ゴンは再び他の女性たちと関係を持ってしまっていました。
感情と行動がすれ違い続ける登場人物たちの様子が、この場面でも切なく描かれています。
市川の自己発見と、母の言葉
幼い頃から男女の役割を逆にしたお人形遊びを友人に笑われてきた市川は、実家に戻り慎二と別れたことを両親に報告します。
過去の恋愛を振り返る中で、権威を得ようとすると不機嫌になる相手ばかりだったと気づきます。
慎二を自身の戦略のために利用しようとしていたことに気づきながらも、一人では弱くて戦えないと話す市川に、母は相手は人間であり独りよがりではいけないと言い返します。
泣く市川に、母は市川も人間だから仕方ないと言葉をかけます。
自らゴキブリを退治し母の本を手放した市川は、誰かを巻き込まない形で母の物語を超えると決意します。
戦略として人を見ていた市川が、自分も含めたすべての人間の弱さを受け入れていくこの場面は、市川というキャラクターの大きな成長を感じさせてくれます。
ゴンのけじめと、凪への気持ちの終わり
凪と結婚するために工事現場で働いていたゴンは、凪と慎二が距離を縮める様子を目にしてから夜な夜な他の女性と関係を持ち続けてしまっていました。
恋をすることで自分と慎二を比べて卑屈になっていくゴンに、同僚は他者と自分を置き換えて考え続けることの危うさを指摘します。
イベントの仕事を通じてこの仕事が好きだったことを改めて実感するゴン。
ゴーヤのつたを切りながら凪への気持ちにけじめをつけるゴンの姿は、これまでの彼の歩みを思い返すと、静かな感動をもたらします。
他者への依存的な優しさを繰り返してきたゴンが、初めて自分自身の感情に正直になろうとした恋の終わり——それは、ゴンにとっての大切な成長の瞬間でもあります。
高速道路でのイワシと、ふたりの笑顔
うらら親子は中学受験合格を機にアパートを離れる報告をし、吉永も田舎への引っ越しを計画していることを話します。
周囲が別々の道へ動き出したことで、凪も本格的に就活することを決意します。
タロさんのもとへイワシを受け取りに向かった凪に慎二が同行します。
渋滞で高速道路が動かなくなったため、高速道路沿いでイワシのはらわたを取りながら、慎二は市川と別れたこと、凪はゴンとの関係に終止符を打ったことをそれぞれ話します。
運転が向いていると慎二から言われた凪は嬉しさを感じ、自分自身と向き合えばかなえられると励まされます。
帰りの運転をじゃんけんで決めようとしたらずっとあいこで二人は笑い合いました。
それ以降、慎二と凪が会うことはなかった——というこの一文は、読者にさまざまな解釈と余韻を残します。
結末を明示しないまま二人の関係を締めくくるこの描き方は、この作品の誠実さそのものです。
凪のお暇の終わり
昔の自分を重ねるような新入社員と出会った凪は、選択への向き合い方についてアドバイスを送り、相手の心を少し軽くします。
仲の良かった住人たちがいなくなったアパートに帰ると、部屋は以前よりも好きなものにあふれていました。
周囲の人々もそれぞれの場所で新たな一歩を踏み出していました。
大型免許の試験に落ちた凪でしたが、お暇の日々で得たものを胸に前へ進んでいました。
かつては悩み、立ち止まるばかりだった分岐点を、今は前向きに受け止められるようになっていた凪。
凪のお暇は終わりました。
しかしそれは、凪の人生の終わりではなく、本当の意味での始まりです。
【12巻(完)のまとめ】
『凪のお暇』12巻(完結)は、すべての登場人物がそれぞれの形で自分の答えにたどり着く、温かく力強いフィナーレでした。
凪・夕・慎二・ゴン・市川——誰もが完璧ではなく、迷い、傷つきながらも前へ進んでいく姿が、この作品を多くの読者に愛され続ける理由だと感じます。

1巻から読み返したくなること間違いなしの、大切な一作です。
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